研究課題
生物は単細胞生物から多細胞生物へ進化することによりさまざまな利点を獲得した。しかしながら、多細胞化の初期駆動力が何なのかはいまだ解明されていない。我々は多細胞化の初期過程は、多細胞化によるエネルギー代謝効率改善に支えられたと推定して、細胞性粘菌の集合をモデルとして検討を進めている。まず、WST-フォルマザン色素によるNADH全量測定を進めた。しかしながら、この方法では、細胞集団の全代謝量を細胞数で割り、個々の細胞の代謝量を算定するので、単一細胞の代謝量の経時的変化を測定できない。そのため、接近、接触、接着といった物理的要因のうち、どの要素が代謝量に影響を及ぼすかについては解明できなかった。そこで我々は、細胞同士の接近、接触、接着が代謝量に及ぼす変化を詳しく調べるためには、独立した細胞毎の代謝量変化を長時間測定する手法を確立する必要がある。。エネルギー代謝量の指標となるATP合成量を測定することは不可能である。ATPを合成するF1F0ATPsynthaseの駆動力とは、F1F0ATPsynthase 頭尾のH+濃度勾配である。このH+濃度勾配は、共役する電子伝達系のNADHの還元力によって生じる。このことからNADHを定量化することにより、間接的にATPの合成量を定量できると考えた。特殊な非蛍光性培養液を用い、単一細胞のNADHの自家蛍光を顕微鏡下で、時間空間分解して測定し、観測する技術を作り上げた。飢餓状態の細胞の集合過程におけるNADH蛍光強度変化測定の結果、時間の経過とともに蛍光強度が減少した。さらに培地に含まれる細胞数が1.35×10E5、0.9×10E5の2種類のサンプルの結果を比較すると、細胞数の多いサンプルの蛍光強度が大きく減少した。細胞密度が高い程、NADH蛍光減少が大きいのは、細胞配位数が大きいほど、エネルギー代謝が減少することを意味し、我々の課程と調和的結果と言える。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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