研究課題/領域番号 |
15K13619
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佃 達哉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90262104)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金クラスター触媒 / 電子供与性配位子 |
研究実績の概要 |
本研究では、金クラスターに対して電子供与性を示す配位子を探索し、これを金クラスターに吸着して電子を注入することで、活性サイトの面積の減少による活性の低下を補償しながら、高活性と高選択性の両立と制御を目指す。本年度は、下記の成果を得た。 【高分子保護金クラスターに対する水素吸着、パラジウム添加の効果】ポリビニルピロリドン(PVP)で保護された直径1.2 nmの金クラスターがNaBH4の共存下で、局所表面プラズモン(LSPR)吸収を示すことの起源を、X線吸収分光法と紫外可視吸収分光法によるin-situ同時計測によって調べた。その結果、NaBH4との反応で生成した水素が金クラスターに吸着する際に電子供与を供与する結果、LSPRが出現することを突き止めた。また、PVP保護金クラスターに対してパラジウムを1原子だけ添加することに成功し、水素化反応に対する活性が劇的に向上することを見出した。このことは、パラジウム原子が金クラスターの電子構造を変調させていることを示唆している。 【担持金属クラスターに対する表面修飾、パラジウム添加の効果】高比表面積炭素上でAg25(SR)18あるいはAg24Pd(SR)18を焼成して担持銀クラスターを調製し、水素化反応に対する活性を比較した。パラジウム1原子の添加によって、銀クラスターが水素化反応に対して活性を示すようになることを見出した。また、担持金クラスターの触媒性能に対する共存配位子が及ぼす影響を調べるために、炭素担持Au144を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画以上に進捗している部分と計画通り進まなかった部分があるので、全体としては概ね順調に進んでいるものと自己評価をした。計画以上に進捗した部分としては、水素が金クラスターに対して電子供与性の配位子として働くこと、および酸素との反応によって容易に除去できることの発見が挙げられる。また金クラスターや銀クラスターに対してパラジウムを1原子添加することで水素化触媒性能が向上する現象は、パラジウムが直接活性サイトとして働くのではなく電子供与性の配位子と同等の作用をすることを示唆している。一方担持金クラスターの触媒性能の追試のなかで、担体として大量に合成した高比表面積炭素材料が不純物によって汚染されていることが判明したため、この部分については進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
炭素に担持したAu144クラスターに対して、有機配位子の種類と被覆率を系統的に制御しながら、アルコールの空気酸化をモデル反応として性能評価を行う。得られた結果から、高活性・高選択性の金クラスター触媒の設計指針を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高比表面積炭素担持金属クラスターの触媒性能の評価を進めるなかで、再現性の問題に突き当たった。さまざまな検討を行ったところ、炭素担体が微量の不純物で汚染されていることが判明した。炭素材料を新たに合成する必要が生じたため、この部分については次年度に持ち越さざるを得ない状況になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的に触媒調製のための試薬購入に充てる予定である。
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