研究課題/領域番号 |
15K13624
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大山 浩 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60192522)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 極低温ラジカル反応 / 配向ベクトル相関 / 散乱部分波共鳴 |
研究実績の概要 |
複雑な多自由度系の反応ダイナミクスの研究には、散乱部分波共鳴の多次元構造の直接観測が極めて有効であると期待される.この観測には反応分子間の相対配向を制御したもとでの極低衝突エネルギー実験が必要である。この実現には、2つの分子線を浅い角度で衝突させるいわゆる合流型分子線衝突が有効であるとの着想に基づき本研究を計画した。湾曲不均一磁場にラジカル種を入射すると、不均一磁場によるゼーマン効果により力を受け、変位し速度方向を徐々に変え、原理的には、ターゲット分子線と合流角0°で衝突する。偏向器に流す電流値を調整し、磁場強度を掃引することで速度選別を行う。上記の手法の開発が本研究の目的となる。 この手法の実現に向けて、本年度は有限要素法を用いて湾曲したコイル様四極子分子偏向器を設計試作し、研究手法の問題点を見出し必要な実験条件を確定することを試みた。準安定希アルゴン原子を用いて、試作した湾曲不均一磁場による変位に基づく速度選別の程度を予備的に求め、問題点を明らかにした。予備実験では、偏向変位が十分でなく、切り出しコリメータースリット径を0.1mm径まで小さくしないと分子線幅により、十分に速度選別できないことが分かった。実用レベルの分子線強度を実現するには、分子線幅を下げることはできないこと、およびラジカル分子線装置の制約上、初期合流角が比較的大きくなること、などの問題点があり、変位幅を大きくする必要がある。実用に十分な磁場強度を得るに必要な電流値を予備実験から算出したところ、現状の連続通電では、加熱の問題が生じることが分かった。この解決のため、現在、GBTモジュールを用いた大電流(400A)のパルス(10マイクロ秒)駆動可能なパルス電源を試作している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は有限要素法を用いて湾曲したコイル様四極子分子偏向器を設計試作し、研究手法の実用上の問題点を見出し必要な実験条件を確定した。準安定希アルゴン原子を用いて、試作した湾曲不均一磁場による変位に基づく速度選別の程度を予備的に求め、問題点を明らかにした。予備実験では、切り出しコリメータースリット径を0.1mm径まで小さくすると速度選別が可能であることが分かった。一方で、試作装置では偏向変位が十分でなく、分子線幅により、十分に速度選別できないことが分かった。また最終目的のラジカル分子線への展開には、ラジカル分子線装置の制約上、初期合流角が比較的大きくなること,および、実用レベルの分子線強度を実現するには、分子線幅を下げることはできないため、実用に向けて変位幅を大きくする必要がある。実測値に基づき実用に十分な磁場強度を算出したところ、連続通電では、加熱の問題が生じることが分かった。研究手法の問題点を予備実験により定量的に明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
実用レベルの分子線強度を実現するには、変位幅を大きくする必要が生じた。また2つのラジカル分子線の初期合流角度を十分に小さくできないため、最終目的に向けて、十分な変位を得るために磁場強度を上げる必要がある。このためには、大電流を流す必要があるが、連続通電では加熱の問題が生じることが分かった。この解決のため、現在、予備実験の結果に基づき、パルス駆動可能な新たな不均一磁場偏向器の設計とGBTモジュールを用いた大電流(400A)のパルス(10マイクロ秒)駆動可能なパルス電源を試作している。これにより,十分な変位を実現し、本手法の実用化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本研究に必要な装置を新たに製作後、予備実験を行い、必要な実験条件を見出し改良する予定していたが、現有装置を流用しての予備実験が可能となったため、現有装置による予備実験を始めに行い、この結果をもとに必要な装置を新たに開発することにしたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現有装置を用いた予備実験結果に基づき、手法の問題点を解決し、新たな装置開発を行う必要があるので、これに使用する。
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