研究課題/領域番号 |
15K13625
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊都 将司 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10372632)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超解像顕微鏡法 / 光異性化反応 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、試料の励起と蛍光検出のため、レーザー共焦点顕微鏡を自作した。励起光源として連続発振UVレーザー(波長325 nm)と連続発振可視レーザー(波長488 nm あるいは532 nm)を用いた。開口数の大きな(NA 1.2~ 1.35)液浸タイプの対物レンズによりUV、可視レーザー光を回折限界程度まで集光し、かつ2つのスポットの焦平面上での空間的重なりを調整可能な共焦点顕微鏡を自作した。試料からの蛍光はアバランシェフォトダイオードで検出するシステムとし、単一光子レベルの微弱蛍光も検出可能なシステムとした。ステージには位置決め精度が1 nm程度のピエゾステージを用い、10 nmの発光スポットサイズを十分評価可能な試料走査系とした。単一量子ドットの発光をUV及び可視光を励起光としてそれぞれイメージングし、二つのビームが高い空間精度(<10 nm)で重ね合わせられることを確認した。 光異性化を示す分子として、これまでに励起状態ダイナミクス計測や多光子環開閉反応実験を行った経験を有するジアリールエテン(DE)誘導体を用いた。励起状態の局在化サイズを共焦点レーザー顕微鏡で検出・評価するために、種々のDEのうち、閉環体で強い蛍光を発し、開環体で蛍光を発さない蛍光性DE誘導体を選択した。上記の共焦点光学顕微鏡を用い、蛍光性DE誘導体を添加した高分子薄膜に蛍光スイッチON用のUV光と蛍光励起用の可視光を集光照射し、UV及び可視光強度を最適化し、それらが同時照射される場合のみDE誘導体が蛍光を発する条件を決定した。さらに、回折限界スポットまで集光したUVレーザーと可視レーザー光の集光スポットの空間的重なりを変化させ、それに伴う蛍光スポットサイズの変化を検出し、回折限界を超えた超解像発光スポットを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の当初計画に沿って、初年度(H27年度)はレーザー顕微鏡装置の構築とその評価を主たるターゲットとして研究を遂行した。連続発振UVレーザー光と連続発振可視レーザー光を励起光源とし、単一光子レベルの検出感度を有する共焦点レーザー顕微鏡システムを構築することが出来た。装置評価・参照用サンプルとして高分子薄膜中に固定化された単一発光生量子ドット用い、UV光励起、可視光励起それぞれの場合で共焦点イメージングを行い、得られたイメージの解析からUVレーザー光と可視レーザー光を空間的に高い精度(<10 nm)で対物レンズの焦平面上で重ね合わせられることを実証し、当初計画どおりの顕微鏡システムが構築出来た。 併せて、参照試料として蛍光性DE誘導体を添加した高分子薄膜を用い、蛍光スイッチON用のUV光と蛍光励起用の可視光を上記顕微鏡システムを用い照射し、UV及び可視光強度を最適化することで、それらが同時照射される場合のみDE誘導体が蛍光を発する条件の決定に成功した。さらに、二つの集光スポットの空間的重なりを制御することで超解像蛍光スポットの形成にも成功し、当初目標を達成した。これらの理由から、進捗状況を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、可視レーザー光を二分割し、液晶空間位相変調器で片方の可視レーザー光の空間強度分布をドーナツ状にデザインし、もう片方のガウス型の可視光と再び重ね合わせることで顕微鏡焦平面上で穴無しドーナツ状の可視ビームを実現する。それとUV光とを用いることで、より微細で等方的な蛍光スポットを形成する。励起用可視レーザー光の空間的な強度分布を穴の空いていないドーナツ状にした場合、等方的な実効的蛍光スポットが実現できることが予測される。穴無しドーナツ状スポットの強度分布を種々変化させた場合に予想される蛍光スポットサイズをシミュレーションにより見積り、最適スポット形状、強度に関する知見を取得する。 その後、そのような強度分布を有する可視ビームを液晶空間位相変調器で形成し、実験的にどの程度微小な蛍光スポットが形成されるかを走査型共焦点イメージから評価する。CdSe等の単一量子ドットをPMMA薄膜に固定化し参照試料とし、空間位相変調器で強度変調を与えた可視光を励起光として走査型共焦点イメージを取得する。得られる蛍光像から可視光集光スポットのサイズ、形状を評価する。ガウス型強度分布をもつUV光でも同様の測定を行い、得られた2つのイメージからUVと可視光が設計どおりの光強度分布・空間的重なりとなっているかを確認する。DE単一分子の共焦点イメージを取得し、実効的な蛍光スポットサイズを評価する。ドーナツ光のサイズや光強度、UV光のスポット径と強度など、光照射条件を種々検討し、励起状態分子のナノ局在化を実現する。
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