研究課題
軟X線イメージングスペクトルスコピー法の実証実験として,大気中であらかじめレーザーを照射することで,場所によって異なる化学状態になっていることが予想されるPt/Co/Pt薄膜を用いた測定を行った。300μm程度の視野の中に780 eV付近(CoのL吸収端に対応する)で10 eV程度のエネルギー幅を有する波長分散した軟X線を照射し,薄膜上のそれぞれの位置における軟X線の吸収量に比例して放出される電子を,光電子顕微鏡を用いて位置分解して一度に取り込んだ。これによって,軟X線吸収スペクトルを分光器を掃引することなく測定することができる。得られたデータを,レーザースポットの内側と外側,それぞれについて足し合わせ,軟X線のエネルギー(軟X線が鉛直方向に波長分散しているので,試料上の上下方向の位置に対応)に対してプロットすることによって,レーザースポットの内外それぞれに対する軟X線吸収スペクトルを得た。得られたスペクトルは,レーザースポットの外側では典型的なCo金属の特徴を示したのに対し,内側では高エネルギー側に特徴的なサテライト構造が見られ,レーザーによるCoの酸化を強く示唆している。このようなレーザースポットの内外での軟X線スペクトルの違いは,通常の単色光と光電子顕微鏡を用いた位置分解吸収スペクトル測定でも確認され,今回開発した軟X線イメージングスペクトロスコピー法の原理を実証することができた。さらに,この手法を化学反応の時空間同時分析に応用するために,100μm程度のドメイン構造を有することが知られているPdRh合金に対して,PdおよびRhの吸収端近傍で位置分解した軟X線吸収スペクトルの測定を行った。
すべて 2017
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Chmistry Letters
巻: 46 ページ: 71-73
10.1246/cl.160886