研究課題/領域番号 |
15K13634
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩本 武明 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70302081)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ジシレン / ケイ素 / 合成法 / 拡張共役系 / π電子系 |
研究実績の概要 |
平成27年度は安定ジシレンを用いたケイ素-ケイ素二重結合伸長反応の開拓を目的として以下の点を重点的に行った。 (i)安定ジシレンの置換基変換 種々の置換基及び合成条件を検討した結果、安定ジシレンのケイ素-ケイ素二重結合上の置換基を還元的に脱離させてケイ素-ケイ素二重結合とシリルアニオンをあわせもつジシレニドを安定化合物として得ることに成功した。さらに合成したジシレニドに対して種々の求電子剤を反応させることで新規安定ジシレンを合成した。これらの反応は二重結合ケイ素上に異なる種類の置換基を持つジシレンでも同様に適応できることを見出し、適切な安定ジシレンを用いれば、一般性の高い反応であることが推定された。これらにより本研究の基盤となる反応を確立した。 (ii)安定テトラシラブタジエンの合成 (i)で得られたジシレニドの酸化的カップリングにより、共役ジシレンであるテトラシラブタジエンを新規に合成した。X線結晶構造解析の結果、合成したテトラシラブタジエンの2つのケイ素-ケイ素二重結合同士は、ほぼ共平面内にあり、これまでに合成されたテトラシラブタジエンの中で最も二重結合同士の二面角が小さく、ケイ素-ケイ素二重結合同士が有効に相互作用可能な構造を持っていた。紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、孤立したケイ素-ケイ素結合をもつ化合物の吸収極大に比べて著しく長波長シフトした吸収帯が観測され、ケイ素-ケイ素二重結合同士の有効な共役が確かめられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(i)安定ジシレンの置換基変換 安定ジシレンからジシレニドを安定化合物として合成し、種々の求電子剤を反応させることで新規安定ジシレンを合成することに成功した。さらにこれらの反応が異なる種類のジシレンに適応可能であり、ある程度一般性があることを見出せたことから、当初の想定以上に研究は進んでいると考えている。 (ii)安定テトラシラブタジエンの合成 (i)で得られたジシレニドの酸化的カップリングにより安定テトラシラブタジエンの合成およびその詳細な分子構造解析に成功しており、順調に研究は進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
(i)安定ジシレンの置換基変換 今年度見出した反応の一般性を明らかにするために、種々の安定ジシレンからジシレニドの合成とその酸化的カップリングによるテトラシラブタジエンの合成を検討し、高収率でテトラシラブタジエンを得るための反応の最適化を進め、鎖状拡張π共役ケイ素化合物の合成に向け基礎をかためる。 (ii)安定テトラシラブタジエンの合成 今年度得られた安定テトラシラブタジエンの更なる官能基変換を検討し、鎖状拡張π共役ケイ素化合物の合成に向けた分子設計の精査を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
重点項目の一つである安定ジシレンの置換基変換反応では、多種類のジシレンを用いた反応を検討する必要があると考えていたが、予想よりも早い時期に目的とする反応の確立に成功し、構造解析や物性の解明に集中したため、消耗品を中心として物品費に関する支出が低く抑えられた。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度反応の基盤が確立されたことから、次年度は多種多様な反応を迅速に検討するために、高純度な試薬や種々の消耗品がより必要になってくる。そのため、次年度使用額はおもに主に物品費、さらに成果発表の為の旅費として活用し、次年度請求する助成金と合わせて使用する。
|