研究実績の概要 |
1.ヘリセニルアニオンを有する金属錯体の調製 平成27年度に9H-シクロ-ペンタ[1,2-c:4,3-c’]ジフェナントレンを脱プロトンすることでヘリセニルアニオンL*を発生させ、ペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウム(II)トリフラート(Cp*RuOTf)と反応させて、シクロペンタジエニル金属錯体(L*RuCp*)を得た。また、一つのRu(II)イオンに2枚のヘリセンが配位した錯体L*2Ruの合成にも成功した。これらの成果の上に立ち、平成28年度には、ルテニウムだけでなく、鉄を用いたL*2Feの合成にも成功した。これらの成果については学会発表ならびに論文発表をおこなった。併せて、本研究の遂行中に、予期せず1枚のヘリセンにRu(II)イオンが二つ配位したカチオン性錯体[(Cp*Ru)2L](OTf)も得た。
2.新規ルテニウム錯体の燐光特性 カチオン性錯体[(Cp*Ru)2L](OTf)は燐光発光を示した。従来、発光挙動を示すルテニウム錯体は、2価のルテニウムにsp2混成軌道の窒素配位子の配位している錯体に限られていた。本研究で得られた錯体はシクロペンタジエニル基またはアレーン基のみが配位した錯体で、このような形の物質で燐光発光が見られた例はない。本研究ではさらにこの発光の由来について理論科学的な考察をおこない、配位子を介した二つのルテニウムイオン間の相互作用が、発光に重要なはたらきを示すことを明らかにした。この成果については現在最終的な実験をおこなっており、平成29年度に論文報告予定である。
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