研究課題/領域番号 |
15K13638
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
秋根 茂久 金沢大学, 物質化学系, 教授 (30323265)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 自己集合 / 炭素ケージ / 有機金属錯体 / カゴ型分子 / 白金 / パラジウム / アルケン錯体 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子全体が一つのパイ電子系となっているケージ状分子「フラーレン」と並ぶ新しいケージ状分子ファミリーの創出をめざして、炭素骨格のみで(ヘテロ原子を導入せずに)多環芳香族を正多面体型に組み合わせていく「多環芳香族パネリング」の手法を提案する。この手法により、オール炭素骨格の新規なカゴ型分子の新しい構築法の開発への足がかりを得るのを目標とする。 まず、研究の第一ステップとして、10族遷移金属とアルケンのパイ錯体の形成を自己集合に用いることを試みた。各種パラジウム(II)および白金(II)の錯体 [ML2Cl2] (M = Pd, Pt, L = Styrene, etc.) を出発物質として、配位子交換により各種ビニル体の導入を検討した。アセトニトリルおよびジメチルスルホキシド中では、この置換反応は進行しなかったが、クロロホルム中では出発物質とは異なる生成物が観測された。各種スペクトルによる検討の結果、アルケン配位子の交換に伴って、単核構造 [ML2Cl2]から二核構造 [M2L2Cl4] への変換が起こっていることが明らかとなった。この条件を用いて、トリフェニルベンゼン骨格をもつトリビニル体配位子との交換反応を検討した。反応後の各種スペクトルによる分析の結果、遊離したスチレンが反応後に観測されたことから配位子交換反応が進行したことが確かめられたが、生成物には複数種の錯体が含まれていることが示唆された。現在、スペーサー部位の構造を変えたオリゴビニル体との錯形成による自己集合体の構築について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘテロ原子を導入せずに多環芳香族をパネリングする手法として、10族遷移金属とアルケンのπ錯体に着目し、その錯形成の挙動を明らかにすることができた。この成果は次年度の研究推進のために十分意義のある知見である。
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今後の研究の推進方策 |
炭素骨格のみで多環芳香族をパネリングする手法として、10族遷移金属とアルケンからのπ錯体の形成が有効であることが示されたので、二年目の研究においては、この手法を用いて各種環状錯体、カゴ型錯体の合成を試み、新規炭素ケージの構築法の開発を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
白金錯体等の合成条件検討に要した溶媒・試薬類が当初の予想より少なくて済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
ケージ状分子の合成検討および構造決定に必要な消耗品類を購入する。また、成果発表のために旅費を計上する。
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