本研究では安定した酸化還元特性を有するポルフィリン類縁体を開発し、それを電極活物質として用いる有機二次電池を創生することを目的に研究を行った。本年度は、反芳香族ポルフィリンであるノルコロールの周辺に様々な置換基を導入し、その酸化還元特性を制御することを試みた。ノルコロールに電子求引基や電子供与基を導入すると大きく不安定化し、化合物を単離することができなかった。これは、電子求引基のためLUMOが低下し、あるいは電子供与基のためにHOMOが上昇し、化合物が酸化や求核攻撃に対して不安定になったためと考えた。しかし、ノルコロールに電子求引基と電子供与基の両方を導入した場合には、適度に分子軌道に対して摂動を与えることができ、目的化合物を安定に単離することができた。また、置換基の導入により光学特性や電気化学特性を制御できることが分かった。また、導入した置換基は結晶中でのパッキング構造に大きく影響を与える。その結果、ノルコロール誘導体の固体物性が大きく置換基に依存することが分かった。現在、これらの新規反芳香族ポルフィリン誘導体の二次電池への利用を試みている。 一方、優れた酸化還元特性をもつ環拡張ポルフィリンを電極活物質として用いてリチウム二次電池を作成した。その結果、比較的良好な充電容量およびサイクル特性を示すことが分かった。しかし、その性能はノルコロールを電極活物質として用いた場合には及ばなかった。酸化種および還元種の安定性の向上が必要であることが分かった。
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