研究課題/領域番号 |
15K13642
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 直 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70311769)
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研究分担者 |
福原 学 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30505996)
西嶋 政樹 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (70448017)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キラリティー / 円二色性 / 円偏光発光 / ヘリセン / ヘキサアリールベンゼン / 理論計算 / らせん / プロペラ状キラリティー |
研究実績の概要 |
キラル発光素子は3D液晶や内視鏡などの医療技術、情報通信などの分野で注目される特異な物性を有する素子である。一方、これらの発光特性に関して、その設計指針は確立されていない。 本研究では、様々な分子システムにおいて、高輝度で高異方性を示す発光材料を開拓し、その設計指針を示すことが目的である。申請者は、そのとりかかりとして、ヘリセンのらせんキラリティーに着目して研究に着手した。ヘリセンのらせん構造は強い異方性を示すが、一方で母体のヘリセンの発光特性は改善の余地がある。縮環したヘリセンや、ダブル、トリプル型のヘリセンはこのような欠点を補完することが経験的に知られているが、その物性との相関の本質や、体系的な設計指針の確立には至っていない。 本年度は、このような研究の一環で、特にトロイダル構造を有するプロペラキラリティーに着目して研究を進めてきた。また、ナノチューブやメビウス構造体のキラリティーに関しても合わせ検討し、キラリティーと物性相関の体系化を着実に進め、その成果の一部を報告した。 研究成果の詳細は本書後半に示すとおりであるが、国際会議における招待講演8等8件を筆頭に、J. Am. Chem. Soc.誌 2報、J. Phys. Chem. Lett.誌 3報を含む15報の論文等に公表し、その成果の一部は新聞報道もされるに至った。また、個人的な研究成果はもとより、日本化学会でキラル発光に関する特別企画を企画開催し、その企画代表を務めるなど、分野全体の発展にも尽力した。最終年度における研究に向けて大いに期待の持てる状況であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は研究計画全体の中間の年にあたるが、検討課題である当初目標をほぼ達成した。業績欄に記載の通り、J. Am. Chem. Soc.誌、J. Phys. Chem. Lett.誌を含む計15報の論文として成果発表できたことは当初予想をはるかに上回るものであった。また、国際会議の招待講演はもとより、日本化学会の特別企画の企画責任者として、キラル発光の特集を組むなど精力的に活動した。成果の一部は、新聞報道もされるなど、非常に充実した結果となった。来年度は最終年度となるが、これらの結果を基盤として、さらに大きく展開していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は極めて順調に研究が進んだと考えており、今後もこのペースで研究を進めたい。具体的な検討課題としては、キラル発光材料の開拓にとどまらず、これまでのキロプティカル特性の検討で得られた知見を基に、さらに一般的な光学材料の改良へのフィードバックも視野に入れた展開を試みたい。また、静的なキラル物性の検討の枠を超え、外部刺激に応答するようなスイッチング材料への展開も検討したい。ヘリセンのらせんやプロペラキラリティーに関してさらに検討を進め、その成果を動的システムに取り込むことで、強い物性と機能性の両立を達成するような分子系の実証へと進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初購入予定にしていた機器等が、他財源で供給、共用できたため購入を見合わせた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し費用を活用し、本研究計画の効率的な推進に必要な分光器の購入、並びにキラル分光測定に必要な消耗品等を購入する予定である。このことにより、研究計画がより柔軟となり、本プロジェクトの更なる進展が期待される。
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