研究課題/領域番号 |
15K13643
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸部 義人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60127264)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 開殻性一重項分子 / ジラジカル / 反芳香族性 / インダセン |
研究実績の概要 |
(1)速度論的に安定なas-インダセン誘導体の物性調査 速度論的に安定なas-インダセンの合成には少なくとも四つのかさ高い立体保護基の導入が必要とされる。そのため不飽和ケトンを経る合成ルートを考案したが、その実現可能性を探るため、s-インダセンをモデルとして検討した。その結果、ジエチニルアセチレン誘導体を中間体とする転位を含む環化反応を用いた新しいs-インダセン合成法の開拓に成功した。さらに、不飽和ケトンを用いた四つの立体保護基の導入も行い、as-インダセン系においてもこの方法による置換基の導入が可能であることを確認した。この結果をうけてas-インダセン骨格の合成に着手する。 (2)チオフェン縮合as-インダセン類縁体の合成と物性調査 目的としている6種類の構造異性体のうち、o-キノジメタン型の異性体の1種類について前駆体の合成を達成した。立体保護基のない化合物の合成を目指した反応を行ったところ、[4+4]型の二量体を思われる生成物を単離した。これは反応系中において目的物が生成していることを示す証拠であり、立体保護基の導入により目的物の合成が可能であることを示唆している。o-キノジメタン型の残りの2種類についても原料合成に着手している。 なお、[4+4]型の二量体は、ねじれたシクロオクタテトラエン骨格をもつ珍しい化合物であるため、その構造と物性についても調査し、類似の化合物との比較を行いこの共役系の特徴づけを行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)速度論的に安定なas-インダセン誘導体の物性調査においては、まだas-インダセン骨格の構築にいたっていないが、モデル系のs-インダセン骨格の新しい構築法を開発するとともに、立体保護基の導入法について確認した。 (2)チオフェン縮合as-インダセン類縁体の合成と物性調査については、o-キノジメタン型の異性体の1種類について直前の前駆体まで合成を達成するとともに、立体保護基のない化合物の合成反応において、目的物の生成を示唆する二量体を単離、確認することができた。 これらの成果は、いずれも目的物が合成できる可能性を支持するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)速度論的に安定なas-インダセン誘導体の物性調査については、予備実験の結果をうけてas-インダセン骨格の構築と目的物の合成に着手する。またモデル実験で合成したs-インダセン誘導体について、構造や物性の調査を行う。特に置換基の違いによる構造の対称性やそれに基づく物性の違いに着目した研究を行う。 (2)チオフェン縮合as-インダセン類縁体の合成と物性調査については、o-キノジメタン型の異性体の残りの2種類についても合成を進める。現在、直前の前駆体まで合成した異性体については、立体保護基を導入した目的物の合成と単離、構造決定を行う。また置換基をもたない目的物の二量体については、ねじれたシクロオクタテトラエン骨格をもつ珍しい化合物であるため、その構造と物性についても調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
27年度は予備実験段階であり、比較的手持ちの試料を用いて合成することが多かったたため研究費を節約することができた。しかし、28年度は従来とは全く異なる方法で新規骨格の合成に着手するため、これまでより格段に多くの薬品の購入が必要となる。
|
次年度使用額の使用計画 |
新規骨格合成のため、クロスカップリング用のパラジウム触媒を多用する。そのため高額の薬品を購入する必要がある。
|