研究実績の概要 |
平成28年度は,抗真菌化合物であるアンフィジノール3の人工類縁体モデル化合物の合成を検討した。まず,テトラヒドロピラン環部分の大量合成を行った。その原料である光学活性な (1S)-(E)-1-ヨードヘキサ-1,5-ジエン-3-オールは,重要な合成中間体である。当研究室ではラセミ体の速度論的光学分割を経由する合成法を既に報告しているが,エステルの部分還元の再現性が低く,またアルデヒドが不安定で揮発性が高いため取り扱いが困難であることが問題であった。そこで,エステルおよびDIBALHの溶液をマイクロフローリアクターによって混合し,生じた反応溶液を臭化アリルマグネシウムの溶液に注ぎ込むことで,エステルから直接ラセミ体の(E)-1-ヨードヘキサ-1,5-ジエン-3-オールを合成することに成功し,これらの問題点を解決した。また,フロー条件でのリパーゼを用いた速度論的光学分割を行うことで,(1S)-(E)-1-ヨードヘキサ-1,5-ジエン-3-オールを95%eeで得ることに成功した。さらに,クロスメタセシス反応,位置および立体選択的なSharpless不斉ジヒドロキシ化反応,鈴木‐宮浦クロスカップリング反応,香月-Sharpless不斉エポキシ化反応,および酸触媒による6-エンド環化反応を経由して合成した。さらに,末端エポシドへと誘導し,プロパルギルリチウムを用いたエポキシドの開環反応による側鎖の導入を行った。さらに,エポキシドの開環を経由する2つのTHP環部の連結法の開発を検討した。
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