研究課題
「ストークスシフトが大きく、近赤外領域に強い発光を有する安定な分子」を創製することができれば、近赤外色素レーザーや生体イメージング分野において大きな発展が期待される。しかしながら、近赤外領域に強い発光を示す分子はほとんどなく、分子設計指針の構築が求められている。本研究では、「環状多量化法」の提案とその有効性の検証を行った。まず、新規デザイン分子として、オリゴピロール化合物を混乱型結合を用いて連結した、BODIPY色素を基体とする、箱型環状多量体(3量体、4量体)(混乱カリックス[n]フィリン:n = 6または8)を合成することに成功した。NMRをはじめとする各種分光学手法、及び単結晶X線構造解析により構造決定を行った後、発光寿命測定、発光効率とストークスシフトの関係性評価、レージング特性評価を行なった。その結果、単量体の場合、4 ns程度であった発光寿命が環状化により、14 ns(3量体)、27 ns(4量体)と著しく伸び、またストークスシフトが3000 cm-1 と異常に大きな値を示すことが明らかとなった。一連の実験とDFT計算による理論的考察を通して、ストークスシフトを大きくするには、「環状多量化」が有用であり、環状多量化により、縮退していたフロンティア軌道エネルギーが分離し、遷移確率の異なる、いくつかの励起状態を取りうること、また、その中には大きな遷移確率の励起状態を含むことが示唆された。さらに、長時間レーザー発振実験により、環状化による光安定性の増大も確認された。今後、より長波長吸収を持つ単量体ユニットの組み込みを通して、高性能の光機能性近赤外分子の創製が期待される。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (48件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件)
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