研究実績の概要 |
ベンゼン環に6つのアルキニル基が置換した六置換ベンゼンであるヘキサアルキニルベンゼン誘導体は、その特徴的な構造と電子的特性から機能性有機材料の分野で用いられている有用な合成中間体である。しかしながら、報告されているヘキサアルキニルベンゼン誘導体の合成例は工程数の多さ、副生成物の生成など解決すべき問題点があった。一方当研究室では、多置換の六員環を構築する原子効率の高い合成法として知られる触媒的[2+2+2]付加環化反応を数多く報告している。そこで報告者は本反応を利用し、1,3,5-ヘキサトリインの中央のアルキン部位選択的な触媒的[2+2+2]付加環化反応を行うことで、効率的にヘキサエチニルベンゼン誘導体が合成できると考えた。 過去の研究、DFT計算をもとに両末端に嵩高いトリイソプロピルシリル(TIPS)基を有する1,3,5-ヘキサトリインをモデル基質としてイリジウム、ロジウム、コバルト、ルテニウム、ニッケルなどの遷移金属触媒、ならびにホスフィン配位子の検討を網羅的に行った。その結果、本反応は中性イリジウム錯体[Ir(cod)Cl]2と二座リン配位子rac-BINAPより調製される触媒存在下進行した。原料であるトリインが多く残存するため、低収率ではあるが所望のヘキサエチニルベンゼン誘導体が得られた。トリインの低い反応性の理由がTIPS基の嵩高さであると考え、トリメチルシリル(TMS)基やフェニル基を検討した。その結果、トリインは消費されたが、消耗の環化体の収率が改善しなかった。
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