研究実績の概要 |
当初ターゲットにしていた電子ドナー(D)とアクセプター(A)からなるDA一次元鎖化合物、[{Ru2(2-MeO-4-ClPhCO2)4}BTDA-TCNQ](benzene) (1; 2-MeO-4-ClPhCO2- = 2-methoxly-4-chlorobenzoate; BTDA-TCNQ = bis(1,2,5-thiadiazolo)tetracyanoquinodimethane)とその[Rh2]ドープ化合物(JACS 2013, 135, 17715-17718)について、単結晶における誘電測定を行ったところ、低温領域でも誘電異常が見られなかった。しかし、最近、誘電が協奏する物質の候補となる中性-イオン性転移DA一次元鎖化合物の第2例目を見出したので、詳細を検討した。この化合物は一段階で中性-イオン性転移を起こし、結晶溶媒を含みはするが、比較的安定な化合物である。その転移時における誘電応答とスピン配列の相互作用について期待できる。 また、スピンパイエルス転移に似たスピン二量化に伴う構造転移が観測される三次元骨格体を見出した。この化合物は、確かに、スピンの反強磁性カップリング時に誘電異常が観測される。今後、強磁場下での誘電応答の測定を行う予定である。
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