研究実績の概要 |
本研究の目的は,従来セラミクスでしか実現していない光エネルギーのアップ・ダウンコンバージョン(UC・DC)を可能とする異核ランタニドクラスター錯体を生成させ,フォトニック材料を創製するところにある.実績は次の通りである. 1.異核複核Lnクラスター錯体の生成:Ln3TCAS2が1:1錯体Ln1TCAS1を経て段階的に生成することを利用し,Tb(III)とTCASとの反応混合物を分取LCに供しTb1TCAS1を分取後,Yb(III)を反応させ異核複核錯体Tb2Yb1TCAS2を生成させることに成功した. 2.フォトニクス材料化 アニオン性錯体Tb3TCAS2をカチオン交換体QAE-Sephadex A-25に静電的に定量的に担持させて発光材料を得ることに成功した.これについて発光寿命は1.18 ms,発光量子収率は45%となり高い値を得た.同一の手順による発光材料の調製を重水中で行いTb配位水分子のO-H振動失活の除去による高性能化を検討した.その結果,発光寿命は1.32 msと量子収率は53%と増大することが判った.それほど劇的な効果をもたらさなかったのはSephadexのC-H振動子へのエネルギー移動による失活の寄与と考えている. 3. まとめ フォトニック材料創製の基礎として上記1異核複核錯体Tb2Yb1TCAS2の生成と2材料化を達成した.フォトニクス材料の調製は項目1, 2を組み合わせれば即,実現可能である.一方UCの予備的な検討の結果,蛍光分光光度計の励起源はUCさせるほどの強度がないことが判った.今後半導体レーザーなど強力な励起源の入手が課題となる.
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