研究実績の概要 |
アルゴン雰囲気下で酢酸ニッケルとヘキサアミノベンゼン塩酸塩をアンモニア水に溶解し、その系に微小量の酸素を酸化剤として注入することで水面(気液界面)にて反応が進行させることで、ビス(ジイミノ)ニッケル錯体からなる金属錯体ナノシート(NiDI)を合成した。作製したNiDIをXPS、XRD等で同定した。このナノシートは半導体的電気伝導性と反強磁性的磁気特性を示す。また、酸化の過程を電気化学的に進行させることでNiDIを合成できることも見出した。ニッケルイオンと配位子を含む電解質溶液にITO電極を浸漬し、電位を印加することでITO表面上にNiDIを直接合成することができる。このNiDIは気液界面にて合成されたNiDIと同様のスペクトルを示す。本手法で作製したNiDI修飾ITOはサイクリックボルタンメトリー測定において、錯体部位由来の酸化還元ピークと大きな電気二重層電流を示し、キャパシタ材料としての利用が期待できる。 ニッケルイオンと1,3,5-トリアミノベンゼン-2,4,6-トリチオールを液液界面合成法にて反応させるとビス(イミノチオラト)ニッケル錯体ナノシート(NiIT)とビス(アミノチオラト)ニッケル錯体ナノシート(NiAT)の2種類のナノシートを合成できる。前者は水溶液に酸化剤としてフェロセニウム塩を添加した場合、後者は無添加の場合に得られる。電気伝導性測定においてNiITは半導体的電気伝導性を示したが、NiATは絶縁的であった。この測定結果は第一原理計算で得られたバンド構造が示唆する結果とも一致する。またNiITとNiATを化学的に酸化還元することで相互に変換可能であることを見出した。レドックスにより導電性が変化する材料としての活用が期待できる。加えて、NiATは水素発生反応の電極触媒に利用できることも見出した。
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