研究課題
本研究では、金属数に分布のある金属「粒子」を、金属数や構造が規定された「分子」として精密合成することを目指し、独自の合成コンセプトである金属アミド錯体とピナコールボランの反応を検討した。また、金属元素としては、入手が比較的容易かつ高い反応性を兼ね備えた鉄とコバルトを主な対象とした。H28年の本研究では、非極性の有機溶媒中、ホスフィン類を共存させた条件下で、鉄クラスター合成を検討した。その結果、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィンを用いる反応からは、アミド配位子を持つ四核ヒドリドクラスターが生成し、ホスフィンを共存させずトルエン中で行った反応からは、トルエンを配位させた四核ヒドリドクラスターが得られた。さらに、トリメチルホスフィンを補助配位子とする四核クラスターを溶液中で発生させ、適量の鉄アミド錯体とホスフィン、ピナコールボランを作用させる反応からはアミド配位子を持たない六核ヒドリドクラスターが、適量の嵩高いチオールを作用させる反応からはアミド配位子の代わりにチオラート配位子を持つ四核ヒドリドクラスターが、それぞれ得られた。得られた一連のヒドリドクラスターは全て常磁性であり、1H NMRスペクトルではヒドリド配位子のシグナルが観測されなかったが、ヒドリド配位子の数と位置を含めた分子構造は単結晶X線構造解析により決定し、またヒドリド配位子を重水素標識したクラスターを合成し、質量分析ならびに赤外吸収スペクトルに基づいて、化学組成ならびにFe-H伸縮を確認した。さらに57Feメスバウアースペクトルを測定し、合成した化合物に含まれる鉄の電子状態も明らかにした。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件)
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