本挑戦的萌芽研究では、新たな細胞間コミュニケーションを生み出すために細胞間を繋ぐ分子カニューレとしての「1D MOF」を構築することを目的とし、研究を進めた。本年度は、1ナノメートルサイズの物質透過が期待できる、新しい1D MOFの合成を検討した。我々はこれまでに、イミン形成反応を用い、4つのジベンゾチオフェンを4つのサレン金属配位子で連結した大環状分子の合成に成功した。本研究では、この大環状化合物のサレン配位子にそれぞれ五配位型や六配位型の金属イオンを導入し、大環状金属錯体同士を架橋配位子によって架橋することにより、ケージ型錯体やチューブ型錯体の生成が期待できると考え、亜鉛イオンを導入した大環状亜鉛錯体を合成した。この大環状亜鉛錯体と架橋配位子DABCOから、1D MOFのモデルとなるケージ型錯体を合成した。1H NMR 、元素分析および側鎖の短い大環状亜鉛錯体のX線結晶構造解析より、ケージ型錯体の形成を明らかとした。さらに、亜鉛イオンを導入した大環状金属錯体とケージ型錯体の構造解析および、その内部空間への分子導入を検討するために、ホスト分子としての分子認識能について詳細に検討した。
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