研究課題
ヒドリド(H-)およびボロヒドリド(BH4-)イオンを含有する配位高分子(金属イオンと架橋性配位子からなる錯体骨格)の合成において、初年度の知見をもとに主に遷移金属イオンのボロヒドリド金属塩を各種合成し、それらと非プロトン性配位子および非プロトン性溶媒の各種組み合わせを様々に試すことによって、特にMn(BH4)、およびCa(BH4)2, Sr(BH4)2の金属塩とビピリジル系配位子から様々な配位高分子結晶を合成することに成功した。単結晶解析およびリートベルト解析の結果、内包されるBH4-イオンは金属種によって大きく異なり、多彩な配座を有することが直接観察的に示された。この構造情報を基に、多孔性構造の有無を確認するため窒素吸着(77K)を行ったところMn(BH4)系配位高分子が十分なミクロ孔特性を示すことがわかった。次にTGA装置をアルゴン雰囲気グローブボックス中に導入し、各種BH4含有配位高分子の反応性を落とさない状態で様々なガスフローを行いながら、試料の重量変化を観察した。その結果配位高分子の結晶構造を反映した異なる二酸化炭素ガス(CO2)との反応性を示すことがわかった。特にMn2+イオンに対し、シス配位を示すBH4-イオン2つを有する配位高分子は40℃CO2フロー条件で30重量%の反応性を示すことから、配位高分子内部のBH4-は高い還元特性を保持しており、他の分光学結果とも合わせ、BH4-イオン一つに対して多段階的にCO2分子を還元、挿入するプロセスが進行することがわかった。以上還元活性の高いBH4-を多彩な構造条件で配位高分子内に導入できる合成指針、および固体中における小分子還元特性の能力を明らかとし、ヒドリドの特性を固体で利用する新たな化学において分子を利用する配位高分子の有用性を提案することができた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 7件)
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