研究実績の概要 |
本研究では、原子価互変異性(VT)錯体の電子状態を、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて単一分子レベルで操作・評価し、室温で駆動する超高密度単分子メモリー素子を実現することを目指している。本年度は含長鎖VT錯体の単分子膜を高配向性グラファイト(HOPG)上に作製し、走査トンネル顕微鏡(STM)によって電子状態の読み込みと変換を行うことを目指した。含長鎖VT錯体の単分子膜を作製し、その配列をSTMで観測することに成功している。 一般に、分子の集合構造は界面の特性に強く影響を受けることが知られている。本研究では、含長鎖原子価互変異錯体CoC15Opy ([Co(C15Opy)2(3,6-DTBQ)2]=CoC15Opy = 3,5-dialkoxy(C15H31O)pyridine (C15Opy), 3,6-di-tert-butyl semiquinonate or catecholate ligands (3,6-DTBQ))のHOPG上での配列構造をSTMにより観察した。コバルト錯体のトリクロロベンゼン溶液をHOPG上に滴下し、固液界面を室温大気下でSTMにより観測すると、広い範囲でラメラ構造の2次元結晶を形成していることを見出した。結晶構造を基に分子モデルを作成し、本測定で観測された分子像と比較を行った結果、2本のアルキル基が全てHOPGに吸着し、残り2本のアルキル基が折れまがって一部吸着をした分子構造と良い一致を示すことが明らかとなった。
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