研究課題/領域番号 |
15K13660
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松尾 貴史 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50432521)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 合成化学 / 酵素反応 / 触媒・化学プロセス / ヘテロ元素 |
研究実績の概要 |
セレン配位遷移金属錯体は水素活性化などの有用な触媒活性を示すことが知られている。そこで、本研究では、コンパクトな構造で高難度な反応を触媒する生体金属触媒として、セレン-遷移金属錯体を活性中心に有する新規生体触媒を構築する。27年度は、サブチリシンカールスバーグの活性部位セリン残基をセレノシステインに変換し、セレノサブチリシンを調製するプロトコールを研究グループ内で確立した。タンパク質の精製は、これまでサブチリシンで用いられていた陽イオン交換カラムでなく、チオール基を担持したコバレントクロマトグラフィーが有効であり、得られたタンパク質の二次構造は、元のタンパク質とほとんど変わらないことをCDスペクトルによって確認した。また、Cu2+等の遷移金属イオンが、セレノシステイン部位に配位することを質量分析によって確認した。サブチリシンの熱安定性を支配するカルシウムイオンの有無により、セレノサブチリシンについても熱安定性を制御できることを尿素変性実験によって明らかにした。 また、タンパク質の実験と並行して、セレノサブチリシンに導入するターピリジンおよびジピロメタンを配位子とするルテニウム錯体の合成も実施し、タンパク質に取り込まれることを、MALDI-MSによって確認した。懸念されていた錯体の水溶性は低いものであったが、DMSO等の有機溶媒を5%を最大として添加すれば、コンジュゲーションに十分な溶解度を保持できることも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、入手容易なサブチリシンから化学修飾によってセレノシステインを導入するプロトコールを確立し、アミノ酸置換によってもタンパク質の全体構造は保持されていることが確認された。また、触媒中心となる金属錯体の合成を実施し、この錯体がタンパク質に導入できることを質量分析によって確認した。
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今後の研究の推進方策 |
セレノシステインが配位子として機能している実験的証拠を得るために、Se-NMRを測定するとともに、還元剤存在下での反応中間体の検出、触媒反応活性の観測を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学外実験を予定していたが、学内での実験で完結したことと、機器メンテナンスが、予定よりも少額で済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
タンパク質プロトコールが確立し、タンパク質精製実験が本格化するので、主として消耗品購入のための物品費に充当する。
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