研究課題
セレン配位遷移金属錯体は水素活性化などの有用な触媒活性を示すことが知られている。そこで、本研究では、コンパクトな構造で高難度な反応を触媒する生体金属触媒として、セレン-遷移金属錯体を活性中心に有する新規生体触媒を構築をめざすものである。28年度は、ホストタンパク質の熱安定性制御因子と構築した遷移金属錯体の反応性との相関関係について、27年度で得られた初歩的知見を基に、サブチリシンカールスバーグのSer221をセレノシステインに変換した「セレノサブチリシン」と、比較対照としてシステインに変換した「チオールサブチリシン」を用いて、遷移金属イオンサイトから離れたところに位置するカルシウムイオンの結合状態に対する遷移金属錯体の反応性を各種分光学的手法によって検証した。カルシウムイオンの結合状態は、2つのカルシウムイオン結合サイトの結合力の差によって制御できることが分かった。また、カルシウムイオン結合状況によって、セレノシステインおよびシステインに配位した銅2価錯体の酸化還元挙動も変化することが紫外可視吸収スペクトルおよび電子スピン共鳴スペクトルによって明らかとなった。カルシウムイオンが2個および1個結合している場合、銅2価錯体は、定量的に調製でき、ホストタンパク質の熱安定性および剛直な主鎖の構造的要因が重要であることが示された。さらに、セレノサブチリシンにおいて、還元剤存在下でケトンのアルコールへの変換が加速されることが観測された。
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Inorg. Chem.
巻: 55 ページ: 1613-1622
10.1021/acs.inorgchem.5b02520
http://mswebs.naist.jp/LABs/hirota/tmatsuo/matsuo_jpn.html