研究課題/領域番号 |
15K13662
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中沢 浩 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00172297)
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研究分担者 |
鎌田 幸司 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (20713902) [辞退]
板崎 真澄 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (60382032)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クロロシラン / ヒドロシラン / 還元反応 |
研究実績の概要 |
C-H結合に比べて、Si-H結合は反応活性が高いため、ヒドロシランはケイ素化合物変換反応において重要な化合物である。現在はSi-Cl結合をLiAlH4などの強い試剤で還元してSi-H結合を形成しているが、LiAlH4を合成するのに多大なエネルギーが必要であるため、グリーンケミストリーの観点から好ましい反応とは言い難い。また、LiAlH4は非常に強い還元剤であるため、目的以外の部位も容易に還元してしまうため、官能基を有するシランには適応できないという問題点もある。本研究ではSi-Cl結合をSi-H結合に変換する有用な反応の開発を行う。 平成27年度は、LiAlH4に代わる還元剤としてNaBH4が使用可能であることを見出した。NaBH4はLiAlH4に比べるとマイルドな還元剤であり、他の官能基を容易には還元しないことが知られている。しかし、NaBH4を用いた反応によりSi-Cl結合をSi-H結合に変換する報告例は今までになかった。我々は、反応溶媒としてTHFおよびアセトニトリルを用いることにより、容易にSi-H化合物が生成することを見出した。特にアセトニトリルを用いた場合には室温で15分間反応させるだけでSi-H化合物が収率良く生成することを見出した。この反応はPh2MeSiCl, Ph3SiCl, Et3SiCl, Ph2SiCl2, (n-C6H13)2SiCl2, (PhC2H4)SiCl3など、多くのクロロシランに適応可能であることも分かった。また、ジシランである(ClMe2Si)2も(HMe2Si)2に変換可能であることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロロシランをヒドロシランに還元するには現在はLiAlH4が使用されている。しかしLiAlH4は還元力が強く、望まない官能基をも還元してしまうという問題点がある。また、値段が高い、後処理に難がある、などの問題点も抱えていた。本研究では取り扱いが容易で、安価で、望まない官能基を還元しにくいNaBH4を還元剤に用い、反応溶媒にアセトニトリルを用いることで、クロロシランをヒドロシランに室温という温和な条件下で還元できることを見出した。これは実用面で大きな進展と言える。 また、種々のモノクロロシラン、ジクロロシランに適応可能であり、加えて、1,2ジクロロジシランとの反応でもSi-Si結合を保持したまま還元反応が進行することも明らかにした。これにより、クロロシランのヒドロシランへの変換反応に大きな進展をもたらすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
高価で反応性が高いLiAlH4に代わって、比較的安価で取扱いの容易なNaBH4が、クロロシランをヒドロシランに還元できる反応条件を見出すことができた。この反応はいくつかのクロロシランに適応可能であることが分かってきたが、今後はさらに種々のクロロシランへの適応範囲の拡大を行う。 加えて、遷移金属錯体を触媒に用いて、クロロシランと水素分子との反応によりヒドロシランが生成する反応系の開発を行っていく。平成27年度にもいくつかの反応を試みてたが、今までのところ望む反応系は見い出せていない。この触媒系を完成させるには、錯体触媒が水素分子の活性化を行い、またSi-Cl結合の活性化も行う能力を持っていることが必要となる。また、金属配位圏でシリル配位子とヒドリド配位子が選択的にカップリングする必要がある。これらの条件を満足する錯体の探索が必要であると考えている。今後も鉄錯体に注目し、配位子を工夫するなどして、望みの触媒反応系の開発を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した物品が、予定していた額より少し安価で入手できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品の購入費としての使用を予定している。
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