研究課題/領域番号 |
15K13664
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液晶 / 強誘電体 / カラムナー相 / イオンチャネル / 相転移 / クラウンエーテル / アルキルアミド / 誘電率 |
研究実績の概要 |
人工イオンチャネルを形成可能なクラウンエーテル誘導体に強誘電性を付加した新材料を創製を目的とした物質開発を実施した。カラムナー液晶性化合物であるアルキルアミド置換クラウンエーテル誘導体(1)を、強誘電性の発現が可能な機能性材料として着目し、その相転移挙動・液晶性・分子配列様式・誘電応答に関する検討を実施した。分子1は、ジベンゾ18クラウン-6エーテルを出発物質とした 3 段階の反応により合成した。溶解性試験において分子1は、クロロフォルム およびトルエン 中で透明なオルガノゲルを形成し、ジメチルフォルムアミド および ジメチルスルフォキシド 中で白色の結晶を形成した。オルガノゲルの形成は、低分子化合物の凝集によるナノファイバーの形成と一致する事から、原子間力顕微鏡測定により基盤上での分子集合様式を観察したところ、ファイバーが互いに絡まりあった三次元的な集積構造の形成が確認された。熱物性評価では、分子1は530 K 付近で熱分解を開始することが明らかになり、室温から 500 K の温度域で DSC 測定を行ったところ、3 種類の相を取ることが示された。さらに、偏光顕微鏡観察から高温での液晶相の発現が証明され、粉末X線測定から、液晶相がディスコチックカラムナー相であることが示された。 分子1の液晶相への転移温度は、 200 °C 以上と多の多の一般的な液晶性化合物と比較して高く、その構造-物性相関の評価が困難であった。そこで、液晶転移温度が低いディスコチック液晶性化合物であり、強誘電体カラムの形成が可能なベンゼントリアルキルアミド誘導体 (3BC) との混晶を作製し、その諸物性を評価した。両者の混和性は、示差走査熱量計と 偏光顕微鏡画像から確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、多様な分子集合体中の発現の観点から、4本のアルキルアミド基を導入した新規なクラウンエーテル誘導体の合成を実施し、その基本的な熱物性と構造形成に関する検討を実施できたことから、当初の予定通り順調に研究が進展していると判断した。種々の測定から、オルガノゲル形成、ディスコチック液晶相発現、ナノファイバー形成などの多彩な分子集合体の形成が可能であった。これは、当初予想していた結果と合致するモノであり、ディスコチックカラムナー液晶相と分子間水素結合の形成は、クラウンエーテル部位の積層によるイオンチャネルの形成と一致する結果と考えられる。しかしながら、液晶相への転移温度が想定温度より高く、種々の物性測定に伴う困難が予測される。以上の点を解決すべく、幾つかのアプローチを模索した結果、当研究室で開発した強誘電性のでディスコチック液晶性化合物であるベンゼントリアルキルアミド誘導体との混晶の形成を実施する事とした。新たな混晶形成によるアプローチは、今後の物性測定と機能設計に対する大きな発展を可能とする画期的なアイデアと考えられる。2016年度以降には、関連する成果の発表を実施し、さらなるデータの蓄積により研究成果のさらなる発信が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、多様な分子集合体中の設計に必要な新規なクラウンエーテル誘導体の合成とその基本的な熱物性と構造形成に関する検討を実施している。また、液晶相への転移温度が想定温度を摘果させる、種々の物性測定を実施可能とするために、幾つかのアプローチを模索した結果、当研究室で開発した強誘電性のでディスコチック液晶性化合物であるベンゼントリアルキルアミド誘導体との混晶の形成が可能であることを見いだした。新たな混晶形成によるアプローチは、液晶相への相転移温度を大幅に低下させ、物性測定と機能設計を可能とする。種々の組成比を有する混晶を作製し、その相図の作成から物性測定と機能発現に最も適した混晶組成比を決定する。その熱物性を詳細に検討し、また分子集合体構造の評価を実施することで、混晶中におけるイオンチャネルの形成を確認する。さらなる展開として、イオンチャネル内へのLi+, Na+, およびK+イオンなどの導入を試み、イオンチャネルとしての役割を評価する。これは、主としてインピーダンス測定によるイオン伝導性の評価から実施する予定である。イオン伝導性と強誘電性の共存は、物性測定の観点からは互いに相反する性質であるが、チャネルに導入するイオンのサイズを制御する事で導電性成分の制御が可能である、有効な内部電場の発生にもとずく強誘電性ゲート機構の実現が可能と考えている。
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