研究実績の概要 |
人工イオンチャネルを形成可能なディスコチック液晶性のクラウンエーテル誘導体と強誘電他体のハイブリッド化を目的として研究を実施した。ディスコチックカラムナー液晶性化合物であるアルキルアミド置換クラウンエーテル誘導体(1)に着目して、その相転移挙動・液晶性・分子配列様式・誘電応答に関する検討を実施した。分子1は、 chloroform および toluene 中で透明なオルガノゲルを形成し、これは低分子化合物の分子間水素結合による凝集の結果である。熱物性評価では、530 K 付近で熱分解を開始することが明らかになり、室温から 500 K の温度域で DSC 測定を行ったところ、3 種類の相を取ることが示された。さらに、偏光顕微鏡(POM)観察と温度可変X線回折実験から、高温相がディスコチックヘキサゴナルカラムナー液晶相である事が確認された。しかしながら、分子1の液晶相転移温度が 200℃以上と非常に高く、その構造-物性相関の評価が困難であった。以上の結果から、ディスコチックヘキサゴナルカラムナー液晶性化合物であり、さらに強誘電性を示す1,3,5-ベンゼントリアルキルアミド誘導体 (3BC) との混晶 (1)x(3BC)1-x を作製した。液晶相におけるX線回折実験より、分子1と3BCは互いに独立にカラムナー構造を形成したドメイン分離状態で存在する事が明らかとなった。また、x=0.1の試料を用いて電場-分極(P-E)ヒステリシス曲線を測定したところ、343 Kにおいてヒステリシス曲線が出現し強誘電性の発現が確認された。これは、強誘電体ドメインにクラウンエーテルからなるイオンチャネルドメインが10%共存していることに対応し、強誘電体の内部電場の影響を受ける事が可能なゲートイオンチャネルの形成に成功した。
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