研究課題/領域番号 |
15K13668
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
亀山 達矢 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40646759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 電極触媒 / 異方性形状 / アンダーポテンシャルデポジション / ガルバニック置換 / 酸素還元反応 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
直径数ナノメートルの金属ナノ粒子は、その高い比表面積から触媒・電極触媒材料として、とても高い活性を示すことから盛んに研究が行われている。中でも白金触媒は化学的に安定で、種々の反応に対して優れた触媒活性を示すため、現在広く利用されているが、資源量が少なく高価であるため、中空構造化や触媒活性を大きくすることで使用量を低減する試みが検討されている。一方、触媒活性は、露出した結晶面に依存して変化することが知られており、高活性な結晶面を表面に露出させることで、触媒活性を大きく向上させることができるが、その方法は未だ確立されていない。そこで、本研究ではポリオール法により比較的結晶面を制御しやすいテンプレート金属上へ、白金薄膜を析出させることにより、テンプレートの結晶構造を維持しつつ、薄い白金層を有する触媒の作製を検討する。初年度は燃料電池に用いられる、酸素還元反応の電極触媒活性向上を目指して、この反応が最も効率的に起こる(111)面をターゲットに、テンプレート粒子の合成と、白金層の析出について検討を行った。 ポリオール法により八面体形状を有する、金ナノ粒子を合成した。八面体金粒子はその表面が(111)面で構成されるため、表面へのエピタキシャルな白金層成長により、目的とする構造を作製することが可能である。反応温度や添加する粒子保護剤(ポリマー)濃度を検討することにより、1辺が約100 nmの八面体粒子を収率80%以上で合成することができた。得られた粒子の表面に薄層の白金を析出させる方法として、金表面へのアンダーポテンシャル析出による銅の単層吸着と、ガルバニック置換反応による白金への変換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、ポリオール法により合成する銀八面体をテンプレートとして用いる予定であった。しかし、実際に実験を行ったところ、再現性良く高い収率で八面体構造銀ナノ粒子を合成することが困難であったため、結晶面制御したナノ粒子触媒による活性向上という本研究のコンセプトを明確化するため、銀よりも化学的に安定で取扱い易い金八面体を用いることとした。金八面体粒子については、合成条件検討の結果高い収率で得られるようになった。この八面体金粒子上にアンダーポテンシャル析出法により銅を単層析出させ、さらに析出した銅を白金とガルバニック置換させることにより、当初目的とする異方形状ナノ粒子上へのコアシェル構造白金粒子を作製することができた。現在は得られたコアシェル粒子を実際に電極触媒として用い、酸素還元反応活性を検討し、当初の目的通りにテンプレートとなるコア粒子表面の結晶面が、シェル相の露出した結晶面に反映されているかを検証している。コア粒子の材質変更など、軌道修正の必要が生じたため、当初研究の進捗が遅れたものの、その後構造体作製までは達成しており、予定にほぼ追いついたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在は作製したコアシェル構造粒子を電極触媒として、酸素還元反応活性の評価を行っている。特定の結晶面が露出していない球状金粒子上に、白金を同様に析出させた触媒を作製し、その触媒活性を比較することにより、本研究で作製される構造体の優位性について明らかにしていく。また、自己組織化単分子膜により結晶面を被覆しながら、同様の構造体形成操作を行うことで、頂点や陵など膜の欠陥部位のみに選択的に白金を析出させた、フレーム状白金構造体も作製可能であると考えられる。 テンプレートに用いるコア粒子は、表面に析出した白金の電子状態を変化させることにより、触媒活性に影響を与える。一方で、コア粒子を選択的に溶解させることにより、中空構造粒子化した場合、内部空間も反応場として利用可能になり、触媒の活性な表面積の増加につながると期待される。このように精密に制御したナノ構造と、その電極触媒活性の評価から、理想的な電極触媒構造についての知見を得る。
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