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2015 年度 実施状況報告書

単一分子の熱電性能の計測と熱電変換素子の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K13673
研究機関大阪大学

研究代表者

夛田 博一  大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40216974)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードナノコンタクト / 分子エレクトロニクス / 熱電変換
研究実績の概要

電極と分子の接合によって生じる電子構造を制御することにより,高効率の熱電変換素子を作製することを目標とする。ゼーベック係数は,フェルミ準位における状態密度の微分係数に比例する。これは,電極と分子の軌道の混成によって生じる界面電子状態が重要であることを意味するが,バルク材料の計測では,材料の特性が界面の特性を打ち消してしまう。そこで,界面の効果が顕著に現れる 金属―分子-金属システムを研究対象とし,ゼーベック係数,電気伝導度,熱伝導度の系統的な考察を行う。
平成27年度は、単一分子のゼーベック係数を安定的に計測する技術を確立し、フラーレンや三脚型アンカー分子について計測を行った。走査トンネル顕微鏡を用い、探針と基板の間に温度差を与え、発生する起電力を温度差の関数としてプロットすることによりその傾きよりゼーベック係数を算出した。探針ー分子ー基板に流れる電流を確認した後、一旦、回路を遮断し、探針ー基板間の電圧を計測する。再度、電流を計測し変化がないことを確認する。本計測を自動で行う測定システムを構築した。
フラーレンC82、ガドリニウムおよびセリウムを内包したC82のの計測では、金属を内包した分子の方が、ゼーベック係数が大きくなることを見出した。パワーファクターは、これまで報告されている単一分子の中でも最も大きい値となり、熱伝導度も小さいことが理論予測されており、熱電素子としては、金属を内包させる方が有利であることを確認した。
三脚型分子では、アンカー部分の種類によりゼーベック係数の符合が変化することを見出した。チオフェンをアンカーとする分子は正のゼーベック係数、ピリジンをアンカーとする分子は負のゼーベック係数を与え、電極との接合界面が熱電性能において極めて重要であることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

熱起電力の測定方法を確立し、安定に計測できることを示した。フラーレンをはじめとするいくつかの分子で測定を行い、予測通り、電極と分子の接合様式が熱電性能に極めて重要な役割を持つことを確認するなど、順調に進展している。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、分子のバンドル化による実用素子の作製指針の導出を行う。
単一分子の架橋構造は,基本物性の計測対象として興味深いが,応用には直結しにくい。そこで,分子をバンドル化してナノホール内に挿入して,熱電特性を計測する。分子間の相互作用は,軌道の広がりをもたらし,ゼーベック係数の低下を招く。そのため,分子を絶縁性部位で被覆し,個々の分子の個性を維持したままバンドル化を行う。図1に示した分子ワイヤーは,導電性ワイヤー部を絶縁性のアルキル鎖で被覆した構造となっており,実際,分子同士の接触の影響が回避されている。
ナノホールは,下部電極上に,SiO2 あるいは Al2O3 絶縁薄膜を作製し,電子ビームリソグラフィー技術を用いて直径数十 nm の細孔を加工する。分子を挿入した後,上部より導電性高分子または低融点合金(InGaSn など)でキャッピングを行い外部に電圧を取り出す。

次年度使用額が生じた理由

極低温下での実験を計画していたが、室温中での実験で発展する内容いが見出されたため、低温での実験を平成28年度に実施することとした。そのための寒剤費用を平成28年に使用することとした。

次年度使用額の使用計画

液体ヘリウムおよび液体窒素利用料として、平成28年度に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Seoul National University(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Seoul National University
  • [学会発表] Thermoelectric properties of pyridine and thiophene-based tripodal anchor units molecular junctions2016

    • 著者名/発表者名
      See Kei Lee, Yutaka Ie, Kazunari Tanaka, Aya Tashiro, Henrique Rosa Testai, Ryo Yamada, Yoshio Aso, Hirokazu Tada
    • 学会等名
      International Workshop on Molecular Architectonics
    • 発表場所
      Shiretoko (Hokkaido, Shari)
    • 年月日
      2016-08-03 – 2016-08-06
    • 国際学会
  • [学会発表] Thermoelectric properties of single molecules2016

    • 著者名/発表者名
      Hirokazu Tada
    • 学会等名
      Workshop on Computational Nano-Materials Design and Realization for Energy-Saving and Energy-Creation Materials
    • 発表場所
      Osaka University (Osaka, Toyonaka)
    • 年月日
      2016-03-25 – 2016-03-26
    • 国際学会
  • [学会発表] 熱起電力測定による単分子接合の電子状態の解明2016

    • 著者名/発表者名
      山田 亮・Lee Seekei・田中 彰治・夛田 博一
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス(京都府・京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] Probing spinterface in single molecular junctions by thermoelectric measurements2015

    • 著者名/発表者名
      Ryo Yamada, See Lee, Tatsuhiko Ohto, Hirokazu Tada
    • 学会等名
      Pacifichem 2015
    • 発表場所
      Honolulu (USA)
    • 年月日
      2015-12-15 – 2015-12-20
    • 国際学会
  • [学会発表] 三脚アンカー分子による単分子接合の伝導キャリア制御2015

    • 著者名/発表者名
      Lee See Kei, 家 裕隆, 田中一成, 田代彩, Testai, Henrique Rosa, 山田 亮, 安蘇 芳雄, 夛田 博一
    • 学会等名
      表面・界面スペクトロスコピー2015
    • 発表場所
      国立女性教育会館(埼玉県・比企郡)
    • 年月日
      2015-11-27 – 2015-11-28
  • [備考] Tada Laboratory

    • URL

      http://molectronics.jp/en/

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公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-02-07  

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