研究課題
最近、多重強秩序間の交差相関が注目を集めている。これらの物質はマルチフェロイック物質とよばれ、その中でも強い電気―磁気効果を示す強磁性―強誘電性の研究が急速に展開されている。一方、第3の強秩序として強弾性秩序が知られているが、強弾性を含む強い交差相関の現象に関しては研究が進んでいない。最近強弾性秩序を持つ有機―無機ハイブリッド2次元ペロブスカイト型化合物で単結晶では大きな磁気ヒステリシスを示すものの、強弾性秩序が壊れた粉末状にすると、磁気秩序は結晶状態と変わらないものの、ヒステリシスはほとんど消滅することを発見した。この現象は強弾性秩序が磁化ヒステリシスに関係していることを強く示唆するものである。本研究では、この現象に焦点を当て、強弾性秩序と磁化ヒステリシスの関係を2年間で集中的に研究・解明し、合成設計指針を得、本分野の先導的地位を確立することを目的として研究を始めた。その結果、新しい磁性―強弾性マルチフェロイックの合成に成功した。結晶は、2次元有機ー無機ペロブスカイト化合物であり、室温以上の温度で強弾性転移を、約100Kに傾角反強磁性転移を起こす。傾角反強磁性相では、ヒステリシスの開く方向に著しい方向依存性がある。しかもヒステリシスの開く方向は、強弾性ドメイン方向によって制御が可能であった。この事実は驚くべきもので、強弾性ドメインと磁気ドメインが強く結合していることを示している。従来の考え方では、強弾性転移温度と磁気転移温度が大きく離れている場合は、双方の強的秩序間には大きな相互作用はないと考えれていたが、これを覆す結果である。論文は化学分野で最高のIFを持つAngew誌に投稿中であり、現在査読中である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 15件、 招待講演 8件) 備考 (1件)
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