研究課題/領域番号 |
15K13675
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
齋藤 健一 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (80302579)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 水素 / メカノケミカル / ボールミル |
研究実績の概要 |
水素はクリーンなエネルギー源として年々重要になってきている。我々はメカノケミカル法の一種であるボールミリング法による水からの水素発生を研究している。今年度,大別して以下のことが明らかとなった。 水素生成のメカニズムに着目し,反応前後におけるSiの分析(粒子サイズ,元素分析,表面分析),溶液の分析(Si濃度,質量分析)をそれぞれ行い,反応機構を考察した。その結果,以下の結果が得られた。1)粒子サイズは数時間のミリングで数10um~ナノサイズまで減少,2) 反応によりSiの表面酸化が著しく進行し,ミリング数10時間後に酸素の物質量はSiより多くなった,3)反応による溶出した溶液中のSiの濃度,4)質量分析による溶液中のSi生成物の同定,である。これらの結果から,水中でのSiのメカノケミカル反応による水素発生は,Siの表面酸化による反応とSiの溶液の溶解過程での反応と,二つのプロセスが重要であることが明らかとなった。 アルカリ水溶液を用いたSiのメカノケミカル反応を行った。その結果,大量の水素が生成し,その生成量がアルカリ濃度に顕著に依存することを見いだした。また,反応後の水溶液中のSiの濃度を測定し,溶液中のSi濃度,pH,水素生成速度の三者が,よく対応することが明らかとなった。これらの結果から,アルカリ溶液中でのSiのメカノケミカル反応による,水素発生の反応メカニズムを考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究において,ほぼ予定を消化した。具体的には,I)容器内の温度・圧力変化をその場観測し,状態方程式から水素発生量の時分割観測を行う。II) 発生気体をガスクロマトグラフィー(GC)で定量する。III)Siの走査型電子顕微鏡,動的光散乱,エネルギー分散型X線分析,赤外分光,XPS,ESR測定等より,形状・粒子サイズ,酸化状態,ダングリングボンド等を定量化する。IV) II)~III)の反応時間を変えてサンプリングし,測定・分析を行う。以上I)~IV)の気体発生とSiの時分割観測より,メカノケミカル反応により発生した水素とSiの表面状態の反応動力学を検証したから。特に,水素生成メカニズムについて,当初の計画以上に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
Si以外の物質でのメカノケミカル反応,水以外の媒体での水素発生,ならびに生成メカニズムを,時間のゆるすかぎり行う。また,粉砕容器を変えたときの変化も検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度での消耗品の利用が高くなることが想定されたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
粉砕ボール,試料などの購入に用いる。
|