研究課題/領域番号 |
15K13676
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
川俣 純 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40214689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光の放射圧 / 光渦 / 有機化合物 / 液晶 / コロイド |
研究実績の概要 |
光には物質を動かす力(光の放射圧)がある。本研究は、軌道角運動量を持つ特別な光、「光渦」により、溶液や液晶、柔粘性結晶中にある分子を協奏的に同一方向に回転させられるようにすることを目的としている。そのために、●分子の同一方向への回転運動を感度良く検出する方法の確立、●光渦の放射圧を強く受ける分子の設計指針の導出、に取り組むことを計画している。平成27年度は、①光渦発生装置の製作、②顕微鏡で観察できるサイズの有機微粒子の回転制御に取り組んだ。 ①光渦発生装置の製作:現有のレーザー装置の中で、モード特性の良い光源であるNd:YAGレーザーの高調波である532 nmの光を、位相変調型空間光変調器(SLM)に入射させることにより光渦を発生させられるようにした。生成した光渦を、顕微鏡下で直径数μm程度のポリスチレン球に照射し、光マニピュレーション特性を検証した。その結果、光渦発生の最先端を走るグループと同等の質を有する光渦が生成していることを確認した。また、スパイラル位相板を用いて、波長1064 nmのNd:YAGレーザー光から光渦を発生させる光学系の構築にも着手した。 ②顕微鏡で観察できるサイズの有機微粒子の回転制御:形状とサイズが揃った有機化合物からなるナノ粒子を作製し、有機化合物の分極、屈折率、吸収係数と光渦との相互作用の強さとの間の関係を研究期間内に定量的に見積もれるようにするために、粘土鉱物を被覆したシリカ粒子に着目した。被覆された粘土鉱物に有機化合物を吸着させることで、有機化合物を含む形状とサイズが揃ったナノ粒子を作製することが出来た。有機化合物を含まないシリカ粒子と有機化合物を含むシリカ粒子との間で、作用する光の放射圧を比較したところ、有機化合物を含むシリカ粒子の方が光の放射圧を強く受けることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光渦の発生装置については、当初計画した位相変調型空間光変調器を用いた系に加え、スパイラル位相板を用いた系も構築し、当初計画を上回る進展が得られた。 また、分子の回転制御についても、有機化合物をドープした粘土鉱物が被覆されたシリカ球の回転制御に成功しており、このまま研究を進めれば、研究期間内に本研究の目的の1つである「光渦の放射圧と強く相互作用する分子の設計指針の確立」は可能であると予想される。 さらに、無機高分子の一種であるニオブ酸ナノシートを試料に、無機ナノシート(高分子)一つ一つを協奏的に運動させ、特異的な分子配列をもたらすことにも予備的に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
スパイラル位相板を用いた光渦発生装置も完成させ、光学系を複数にすることでマシンタイムの逼迫を緩和し、複数の大学院生が同時に実験できるようにする。このことにより、有機化合物をドープしたシリカ球の回転制御と同時に、当初計画していた「分子の同一方向への回転運動を感度良く検出する方法の確立」にも取り組めるようにし、研究期間内に「光の放射圧による有機化合物の運動制御」に関する基礎的な知見を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
集光用の対物レンズの購入を予定していたが、光渦生成装置の完成をみずに購入してしまうと、仕様が合わず無駄になる可能性もあったため、購入を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
購入を延期していた対物レンズの購入とともに、成果を国際学会で発表するための旅費に使用する。
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