高配向グラファイト(HOPG)のベーサル面を電極とし、水溶液との界面でビオロゲンが起こす二次元のガス状吸着膜と凝縮単分子膜との間の一次ファラデー相転移を対象として、反応フロントの追跡を目標とした。 電流パルスで核を生成させ、微小電極列で反応フロントを追跡するためのセットアップを完成させた。標的とするビオロゲンとして、両端カルボン酸C7ビオロゲンを選択し、相転移を確実に起こす条件をポテンシャルステップ応答を指標とした検討で見出した。用意したセットアップは当初設計通りの性能を示したが、フロント追跡測定においては非常に大きなノイズを除去できず、得られた応答が反応フロントを確かに捉えたものであるか、確証が得られていないが、今後の研究展開の基盤を固めることができた。 ビオロゲンに蛍光発色団をペンダントし、蛍光のon-offで相転移フロントを追跡する方法を試みたが、相転移が明確に起こらなくなるか、相転移しても蛍光の変化が不十分であった。この検討中に、フェナシルビオロゲンが特異なpH依存のイリド化を起こすこと、更には側鎖を自ら分離する過程も存在することを、吸収スペクトルの時間変化とNMR測定から突き止めた。 2光路のレーザー光反射による反応フロントの解析の課題のため、HOPGでの反射強度の計測精度を確認したところ、エレクトロリフレクタンス測定から見積もった測定能は、必要な検出レベル(1万分の一の反射率変化)に到達することが困難であった。 更に、ビオロゲンの相転移が伝搬することを、ヒドロゲル内での三次元化した相転移的挙動や高濃度ビオロゲン溶液内での電子ホッピングなどから捉える検討を行った。その結果、ヒドロゲルに組み込んだビオロゲンは相転移的還元は起こさないものの、ゲルは大きな収縮と再膨張を起こすこと、高濃度ビオロゲン溶液中では確かに電子ホッピングの寄与があることなどが解明できた。
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