研究課題/領域番号 |
15K13683
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
岡本 裕巳 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (20185482)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | プラズモン / 磁気光学効果 / 光物性 |
研究実績の概要 |
本研究では局所的に強くねじれた円偏光電場をプラズモン物質によって磁性材料上に誘起させることを目指すが,その基礎の第一段階として,金ナノディスク構造をガラス基板上に作成し,これに円偏光を照射した時に磁化が誘起されるかどうかを調べた。磁化は金ナノディスク周辺の局所的な領域に発生すると想定されるため,磁性カンチレバーを装着したプローブ顕微鏡(磁気力顕微鏡)により試みた。しかし結果としては,現時点までに円偏光照射による磁化は検出されていない。そこで,左右円偏光を交互に照射してロックイン検出することにより微小な磁化を検出することを試みるため,光弾性変調器を購入し,これを組み込んだ磁気力顕微鏡を構築した。現時点までにはまだ円偏光誘起磁化を検出することに成功していない。 今一つの方式として,ファラデー効果を用いる検出法を検討している。しかしこれは詳細な検討の結果,増幅した光を用いずに十分な検出感度を得ることに困難が予想されることがわかった。実現するには予算が厳しいこと,またこれを主に担当する予定であった連携研究者の西山の転出等があったため,これには大きく注力せず,本研究では磁気力顕微鏡を用いる方法に集中することに方針を転換した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
円偏光によるプラズモン励起によって磁化が誘起されるかどうかを磁気力顕微鏡によるイメージング観察で探るため,既存(自作)のプローブ顕微鏡に磁気カンチレバーを装着して,試料表面の局所的な磁化を観察できる装置を構築した。これにより,試料表面の磁化によるイメージングは数十~100nm程度の空間分解能で可能となった。また,試料に円偏光を導入する光学系の構築を行い,光照射下で磁気力イメージングが可能となった。試料としてガラス基板上に電子線描画法で金ナノディスク構造を作成し,これに円偏光を照射した時の磁気力顕微鏡像を観察したが,偏光変調をかけない光照射では,有意な磁化を観測することは,現時点までにできていない。左右円偏光の交替を繰り返す円偏光変調を光弾性変調器によって行い,これに同期したロックイン検出を行うことで,円偏光誘起の磁化が発生すればそれを高感度に検出することが可能になると考えられるため,光弾性変調器を購入して光学系に組み込み,円偏光変調した光の照射下で磁気力顕微鏡像を計測する装置の構築まで進んだ。しかしながら,まだ円偏光誘起の磁化の観測には至っていない。ガラス基板以外の材質上に金ナノ構造を作成した試料については,まだ手をつけるに至っていないが,これは次年度に継続して行う予定である。ファラデー効果による磁化検出については,連携研究者の西山の転出等により,必ずしも当初計画通りには進んでいない。したがって,磁気力顕微鏡による研究については装置は概ね順調に構築が進んでいる一方,ファラデー効果による検出はやむを得ない事情により当初計画通りに進んでおらず,また試料の計測はやや遅れているものの次年度に向けた準備は整いつつある状況といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き磁気力顕微鏡に円偏光変調した光を照射する光学系を組み込んだ装置の構築と改良を進め,なるべく高い検出感度が得られるよう努力を継続する。また,磁性材料の表面に金ナノ構造体を電子線描画法で作り込んだ試料の作成を進め,その観測を行う。磁性材料としては,ガーネット結晶等を典型的な例として考えるが,磁性の研究者との議論を通じて,最適と予想される材料を探索する。また金ナノ構造体については,ディスクのほか,リング状の構造を試みる。より小さな構造体が適していることも想定され,その場合は,ナノテクプラットフォーム等を通じて外部との共同研究も視野に入れる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
備品としての光弾性変調器のほか,種々の消耗品を購入したが,わずかに端数が余剰金として発生したため,これが次年度使用額となった。予算に対して0.06%以下であり,実質的にほとんど0である。
|
次年度使用額の使用計画 |
端数程度であるので,次年度の消耗品購入に繰り入れて使用する。
|