研究実績の概要 |
1996年、山本・石原らは世界に先駆けて電子求引基を有するフェニルボロン酸がカルボン酸とアミンの脱水縮合触媒として有効なことを報告した。それ以降、日、米、英、加、豪の研究者らが、より穏和な反応条件下で、より活性の高いボロン酸触媒を求めて凌ぎを削っている。世界がこの研究に強い関心を抱くのは触媒的脱水縮合によるペプチド合成への展開を期待するからである。しかし、未だ熱変成やラセミ化が懸念されるペプチド合成には十分に適用できていない。ごく最近、石原らは従来のボロン酸単独での触媒設計とは異なり、ボロン酸と求核塩基を併用すると穏和な条件下でも脱水縮合反応が進行することを見出していた。本研究課題では最適条件と触媒作用機構を明らかにし、革新的オリゴペプチド合成技術に展開することを目的に研究を行った。その結果、ボロン酸とN,N-ジメチルアミノピリジンN-オキシド(DMAPO)をそれぞれ触媒量用いてアミド縮合反応すると飛躍的に反応が加速することを見出した。ラセミ化反応を抑制するために、より低い温度で反応を行おうとすると原料や生成物の溶解性が悪くなる傾向があり、フルオロベンゼン溶媒が適度な極性を有し、比較的、基質や生成物の溶解度もよく、反応溶媒として使いやすいことがわかった。さらに今回、ボロン酸について詳細に分子構造と触媒活性の相関関係を調べたところ、フェニルボロン酸のオルト位の嵩高さが触媒活性を向上されることがわかった。今後、ペプチド合成への展開が期待される。
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