研究課題
提案課題では実用的な溶液X線吸収分光(XAS)手法を確立し,これを用いて有機溶媒溶液に溶解した常磁性錯体触媒の分子構造決定を目的とした研究を行った。その結果,1)X線透過率,耐有機溶媒性,強度に優れた窒化ケイ素(Si3N4)薄膜窓を有する溶液XAS用分光セルを開発に成功した。また,これを用いて2)Fe錯体触媒反応の反応溶液のXAS解析を行い,溶液中活性種の価数,配位数,分子構造の決定に成功した。さらに,3)単離した常磁性の触媒中間体を用いてin situ XAS測定を行い,基質との当量反応,速度論実験から反応機構に成功した。以上より,本研究では,常磁性錯体を用いる均一系触媒反応のXASによるその場観察の基礎的手法の開発に成功した。特に本研究では,特に嵩高いリン配位子を有する鉄錯体であるFeX2(SciOPP)を触媒として用いるクロスカップリング反応の反応の機構解析に注力した研究を行った。その結果,アルキルハライドとグリニャール反応剤(MesMgBr)の反応が,FeMes2(SciOPP)およびFeMesX(SciOPP)を触媒中間体としてラジカル機構で進行することを見出し,THF溶液中に溶解したFeX2SciOPPとMesMgBrからこれら中間体が生成する過程および,2種の中間体のうちFeMes2(SciOPP)のみが1級アルキルハライドであるブロモデカンとの反応しクロスカプリング生成物を与えることを溶液in situ XASで観察することに成功した。本研究はJ. K. Kochiらの発見より45年間反応機構について論争の続いていた鉄クロスカップリング反応に対して触媒中間体の定量分析に基づく精密な機構決定に成功した特筆すべき例として日本化学会欧文誌Bull. Chem. Soc. Jpn.誌の論文賞を受賞した。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 1件、 招待講演 13件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
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