本研究では実用的な溶液X線吸収分光(XAS)手法を確立し,これを用いて有機溶媒溶液に溶解した常磁性錯体触媒の分子構造決定を目的とした研究を行った。その結果,1)X線透過率,耐有機溶媒性,強度に優れた窒化ケイ素薄膜窓を有する溶液XAS用分光セルを開発に成功した。また,これを用いて2)Fe錯体触媒反応の反応溶液のXAS解析を行い,溶液中活性種の価数,配位数,分子構造の決定に成功した。さらに,3)単離した常磁性の触媒中間体を用いてXAS測定を行い,基質との当量反応,速度論実験から反応機構に成功した。以上,本研究では常磁性錯体を用いる均一系触媒反応XASによるその場観察の基礎的手法の開発に成功した。
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