前年度に見出されたロジウムー炭素触媒と光学活性触媒[RuCl(p-cymene)(C3-tunephos)]Cl複合触媒系によるサリチル酸類の触媒的不斉水素化について、生理活性化合物の触媒的不斉合成への応用について検討した。 ethyl (2-{4-[(2-hydroxycyclohexyl)methyl]phenoxy}ethyl)carbamateは、殺虫剤や飼料添加剤として利用されているメトプレンに匹敵する幼若ホルモン活性を示す化合物である。そこで、Rh/Cと[RuCl(p-cymene)((S)-C3-tunephos)]Cl複合触媒系によって得られたサリチル酸メチルの水素化物(91% ee)をWeirebアミドに変換し、ヒドロキシ基をMOM基で保護した。p-ベンジロキシフェニルリチウムと反応させてWeinrebアミドをケトンに変換した後、Sc(OTf)2存在下、Pd/C触媒で脱ベンジル化とカルボニルからメチレンへの還元を同時に行い、4-[(2-hydroxycyclohexyl)methyl]phenolを得た。18-crown-6と炭酸カリウム共存下、フェノール部位をethyl (2-chloroethyl)carbamateで選択的にアルキル化することによって、目的の化合物が良好な収率で得られた。これによって、サリチル酸エステルの触媒的不斉水素化の合成化学的有用性を証明した。 この合成研究と並行して、o-アミノ安息香酸類の触媒的不斉水素化を検討した。同様の不斉触媒系を用いることによって、収率良く反応を進行させることができ、生成物を高エナンチオ選択的に得ることに成功している。しかし、現時点ではジアステレオ選択性の制御には至っていない。今後の検討課題である。
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