研究期間1年目の成果に基づいて,様々な酸素求核剤による反応検討を行った.その結果,様々なアルコール類およびフェノール類を用いた反応に有効なパラジウム触媒系を構築する事に成功し,当初の目的通りにトリフルオロメチル基を有する様々なエノールエーテルを合成する事に成功した(論文投稿準備中).その一方で,カルボン酸を用いてエノールエステル類を合成する反応においては,その求核剤適用範囲がやや狭く,現状では更なる検討が必要である.しかしながら,研究期間2年目に本格的に着手した炭素求核剤によるアルキル化反応において,インドール3位を求核剤とした反応を円滑に進行させる触媒系構築に成功し,トリフルオロメチル基を有する様々なインドール誘導体の合成に成功した.さらに,既に予備的調査によって,本反応得られるインドール誘導体の多くが特定のがん細胞に対する選択性殺細胞毒性を有する事も見いだしている. 以上,期間全体を通して,含フッ素アリルエステルに対して窒素,炭素,酸素をそれぞれ求核剤としたパラジウム触媒反応を行い,当初目的とした分子内のフッ素原子移動によるトリフルオロメチル基構築を伴う,アミノ化,エーテル化,アルキル化を実現する事に成功した.つまり,本研究において,反応基質の分子内に存在する3つのフッ素原子をパラジウム触媒存在下で収束させ,分子内でトリフルオロメチル基を構築するという新しいタイプの反応を構築する事に成功し,その反応において様々なタイプの求核剤が利用可能である事を見いだした.
|