研究課題/領域番号 |
15K13704
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高田 十志和 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40179445)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マクロサイクル触媒 / ヒドロアミノ化反応 / 高分子反応 / 分子モーター |
研究実績の概要 |
申請者は反応後期でも効率よく進行するマクロサイクル触媒を用いた高分子反応を見出している。この反応系では通常の高分子効果では説明がつかない現象がいくつか観測されている。本研究は、この新しいタイプの高分子反応を丁寧に解析し、0次反応経由の高分子反応の価値と意義を示すことである。今年度は、反応点間に嵩高い置換基を有するポリアリルウレタンを合成し、それを用いたヒドロアミノ化反応を行った。その結果、マクロサイクル触媒の内孔よりも嵩高い置換基をリンカー部位に有する高分子基質では反応が進行せず、その触媒活性の発現には貫通構造形成が重要であることが示唆された。非環状触媒を用いた比較実験では同条件で反応が完了しており、この仮説を支持している。また反応後期で観測される加速効果の普遍性について確認するため、様々なリンカー構造からなる貫通構造形成可能な高分子基質を用いて、ヒドロアミノ化反応を検討した。いずれの基質でも高分子量体でより顕著に加速効果が発現し、いずれも0次反応を含んだ高分子反応が進行していることが明らかとなった。 また、軸上に複数の反応点を有する非対称アリルウレタン基質を合成し、その反応性を評価した。反応転化率がおよそ50%の際に得られた生成物の構造を調査した結果、4つの反応点のうち2つが反応した軸基質とマクロサイクル触媒が擬ロタキサン構造を形成した化合物が主生成物として得られていた。このとき、マクロサイクル触媒は未反応点に隣接した配位点と錯形成していることが示唆された。一方で、すべてが反応した基質はほとんど得られなかった。このことはマクロサイクル触媒が2つの反応点を触媒した後、次の未反応点へと移動した可能性を示している。今後、より連続する非対称基質を合成し、触媒量を変化させながらその反応途中で得られる生成物を評価することで、0次反応経由の分子モーターへの展開が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリアリルウレタンのマクロサイクル触媒を用いたヒドロアミノ化反応において、貫通構造を形成可能な基質において0次反応を含んだ反応が進行していることを確認でき、その基質一般性を示すことができた。また、分子モーターへの展開を見据えた非対称ポリアリルウレタンについても、モデル分子の合成とその反応性評価については一定の成果が得られてきており、今後の展開が期待される。総合的に考えて、研究は概ね当初の研究計画通り進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はマクロサイクル触媒を用いた高分子反応における配位点の効果について検討していく。多数の配位点が軸上に存在していることは、連続的反応の効率的な進行を抑制している可能性が考えられる。そこで、軸上の配位点を極力減らした基質を合成し、その貫通特性と反応挙動を評価していく。また、分子内ヒドロアミノ化反応では環化に伴い、不斉点が生じる。これに着目し、キラルマクロサイクル触媒を用いた効率的高分子反応による高次構造誘起についても検討する。さらに、分子モーターへの展開を目指し、分子量の大きい非対称ポリアリルウレタンを合成し、その反応挙動を精査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた恒温装置の購入を延期したため、繰越額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在は既存の設備で当初計画していた実験系を構築できることが判明したため、繰越額は試薬の購入費に充てて、研究の効率化を図る。
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