研究実績の概要 |
側鎖末端にメチルチオエステル構造を有するポリペプチドPGSMを、OH基を有するチオール(MB)、フェニル基を有するチオール(BM)およびスルホン酸塩構造を有するチオール(MESNA)と水中で共存させることにより、側鎖の組換えおよびそれに伴う高次構造変化が起こることを前年度に明らかにした。しかし、この系では低分子量チオール間の溶解性差が大きいため、組換え後の単離時に低分子量チオールを同時に除去することができず、その結果、一部のチオールを除去した段階でさらに組換えが進んでしまう結果となった。そこで今年度は、BMの代わりにピラジル基含有チオール(MP)を用い、PGSM側鎖のチオエステル基と3種の低分子量チオール(MESNA, MB, MP)との動的側鎖組換えが高次構造に及ぼす影響を調査するとともに、側鎖組換え後のポリペプチドの単離について検討を行った。 PGSMおよび3種類の低分子量チオールをリン酸緩衝液に溶解させ、1H-NMRスペクトル測定により追跡した結果、側鎖組換え反応によるMESNA、MBおよびMPのポリペプチドへの導入が確認された。また、側鎖組換えに伴う主鎖高次構造の変化をCDスペクトル測定により追跡したところ、反応の進行に伴い主鎖高次構造がα-helix構造から変化していくことが明らかとなった。そこで次に、側鎖組換え後のポリペプチド溶液を塩析しポリペプチドと低分子量チオールとを分離したのちに、ポリペプチドを透析により精製した。単離したポリペプチドの1H-NMRスペクトルより、側鎖組成はメチル基:24%、スルホネート基:9%、OH基:54%、ピラジル基:13%であった。また、単離後のポリペプチドのCDスペクトル形状は組換え反応中のスペクトルと大きく変化しておらず、組換え時の側鎖組成を保ちつつポリペプチドを単離することに成功したことが示唆された。
|