研究課題/領域番号 |
15K13706
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤木 和夫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20150964)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 共役ポリマー / 三原色 / 白色発光 / 光応答性 / ジチエニルエテン / 光異性化 / 光スイッチング / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
赤緑青(RGB)蛍光色をもつ三種類の共役ポリマーの側鎖に光応答性部位を導入して、側鎖の開閉環光異性化を通じて、各ポリマーの蛍光色の発光と消光を制御した。1. 三種類の芳香族共役ポリマー(P1,P2,P3)を合成した。P1はフローレンとフェニレンからなるコポリマー誘導体、P2はポリパラフェニレンビニレン誘導体であり、それぞれ青および緑色の蛍光を示す。P3は、フローレン部位と4,7-(2-ジエチル)-2,1,3-ベンゾチアヂアゾール部位を含むコポリマー誘導体であり、赤色の蛍光を発現する組成比を最適化した。2. P1とP2は、フェニレン繰り返し単位部位に、P3はフローレン繰り返し単位部位に、それぞれ光応答性ジチエニルエテン[DE]部位を導入した。3. 各ポリマーに紫外光および可視光を照射すると、側鎖のDEが閉環および開環し、それに伴い、各赤緑青(RGB)の蛍光色が消光および発光することを分光学的に実証した。紫外・可視光の照射に伴う蛍光の発光と消光の繰り返し耐久性を明らかにした。4. 各RGBポリマーのナノ粒子を調製した後、これらを最適の組成比で混合して白色蛍光のナノ粒子溶液およびキャストフィルムを得た。これに紫外・可視光を照射して、白色蛍光の発光と消光をスイッチング制御すること可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の第1の目標である、側鎖の光応答性部位の開環・閉環を伴う光異性化を通じて、各ポリマー主鎖のRGB蛍光および白色蛍光の発光と消光を可逆的にスイッチングすることを実現した。そこで、第二の目標である、白色蛍光と各RGB蛍光とのスイッチングを光で制御することを試み、こちらも本研究開始一年目で成功することができた。すなわち、三種類の共役ポリマーの混合系において、そのひとつを、光応答性側鎖をもたないポリマーに置き換えることで、白色と各RGB色との間で可逆的に発光色が変わるポリマー系を開発した。 まず、三種類の芳香族共役ポリマー(P1,P2,P3)と同じ主鎖骨格を持ち、側鎖には光応答性部位を持たないポリマー(P1’,P2’,P3’) を合成した。次に、RGBポリマーナノ粒子から混合系において、ポリマーのひとつを、光応答性部位を持たない(長鎖アルキル基を有する)ポリマーに置き換えることで、白色と各RGB色との間で可逆的に発光色が変わる新規混合系を調製した。すなわち、三種類の組み合わせからなる混合系(P1’,P2,P3)、(P1,P2’,P3)、(P1,P2,P3’)は全て白色蛍光を示すが、これらに紫外光を照射すると、それぞれ赤、緑、青色の蛍光を示し、次に、可視光を照射すると、全て白色蛍光に戻ることを実現した。 さらに、ポリマーナノ粒子からなるキャスト薄膜を調製して、ナノ粒子からなる溶液の場合と同様の実験と評価を行った。これにより、ナノ粒子からなる溶液および薄膜状態での光応答性スイッチング機能を有するポリマー白色発光体群を開発することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
レインボーカラーと称せられる七色の蛍光発光の芳香族共役ポリマーの側鎖に、光応答性のジチエニルエテン部位を導入する。側鎖のジチエニルエテン部位の開環と閉環をもたらす光異性化により、主鎖の発光を可逆的に発光と消光をスイッチングすることを実現して、七色の発光と消光を光り照射で制御することを可能とする。 1.七種類の芳香族共役ポリマーおよび共役コポリマー(P1~P7)を合成する。これらのポリマーの側鎖に、それぞれ光応答性ジチエニルエテン部位(DE)を導入する。 2.各ポリマーに紫外光および可視光を照射することで、側鎖のDEが閉環および開環し、それに伴い、七色の蛍光色が発光および消光することを分光学的に示す。紫外・可視光の照射を繰り返すことで、蛍光の発光と消光の繰り返し耐久性を明らかにする。 3. 七色発光のポリマーのナノ粒子を調製した後、ナノ粒子からなる溶液およびキャストフィルムを調製する。これに紫外・可視光を照射して、七色蛍光の発光と消光をスイッチング制御する。
|