研究実績の概要 |
ポリビニルアルコール(PVA)やその共重合体は水酸基側鎖特有の性質(親水性,水素結合性)を反映した機能を発現する重要な機能性ポリマーである。本研究では,ビニルアルコールユニットに対して立体規則性,配列,主鎖形態を制御する手法の開発と,これら構造因子が得られたビニルアルコール系ポリマーの水素結合性に与える影響を調べる。さらに,結晶性・溶液特性・自己組織化挙動を調べ,そこからヒドロゲル特性,ガスバリア特性,接着性などの特性を評価し,機能性材料の創出を目指す。 平成28年度は,高制御性リビングカチオン重合系を用い,疎水性で結晶性を示す長鎖アルキル基を有するビニルエーテルとPVAユニットに変換できるtert-ブチルビニルエーテルを組み合わせ,重合完了後に違うモノマーを添加する連続ブロック共重合を行い,ビニルアルコールユニットの位置や配列が制御されたポリマーの合成を検討した。しかし,両者の反応性の違いが大きいために制御が困難であることがわかった。そこで,tert-ブチルビニルエーテルよりも反応性が低く,ビニルアルコール同様に水酸基側鎖を与えるモノマーを用いたところ,連続ブロック共重合が制御された。こうして,結晶性ポリマーに対して周期的に水酸基を導入したポリマーを合成したところ,ホモポリマーに比べて結晶化速度と融点の向上が見られた。通常,共重合すると結晶性が低下すると考えられるが,水酸基を周期的に導入したことによる効果と考えられる。
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