本研究では、合成化合物であり、ペプチド・タンパク質と同様の二次構造を形成するフォルダマーの分子骨格を提案し、その二次構造を外部刺激によりダイナミックに制御する分子システムの構築とポリマー化を目的とした。 昨年度までに、分子のフォールディング状態の光制御により、分子内のπーπスタッキングを可逆的に制御した分子システムの構築に成功している。本年度は、πスタッキング部位に発光団のピレンを導入し、更に、フォールディングの巻き方向(右巻き、左巻き)を制御した円偏光スイッチング分子の開発を行った。この分子は、光照射前は、ピレン間のキラルスタックによりエキシマー由来の円偏光発光を示すが、光照射により、二次構造が変化し、円偏光発光が消失する。 更に、ピレンの部位にアキラルな9配位希土類錯体を導入した二核性のキラル錯体を作成し、光照射に伴う2つの希土類錯体のキラル配置変化により、円偏光発光の変調を導いた。更に、円偏光発光の指標である異方性因子は、先述のピレン系分子に比較して10倍程度の増強に成功した。これは、局所的にはアキラル構造を有する2つの希土類錯体をキラル配置することで、円偏光発光が得られる初めての例であり、学術的に意義深く、更に、それを動的変調することに成功したことは応用面でも期待がもてる。 最後に、キラルな二次構造を導入したポリマーの合成を行った。合成したポリウレタン系の高分子が光応答性を示すことを確認した。
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