研究課題
接着剤を用いた材料の接合は工業的に非常に重要な技術であり、自動車産業や航空産業をはじめとする多くの工業分野で利用されている。材料の接着性を向上させるために多くの研究がこれまでに行われているが、接着がどのような界面相互作用により起こるのかは十分には明らかにされておらず、古くから議論の対象となっている。特に原子レベルでの接着界面の解析は実験的研究では非常に困難であり、理論計算によるアプローチが期待されている。理論計算による接着機構の解析は今までほとんど行われていなかったが、近年の計算機や計算理論の進歩により表面や界面といった大規模系の計算が可能となった。今年度は量子化学計算を用いて、金属表面、炭素繊維表面およびガラス表面とエポキシ樹脂との接着相互作用に関する分子論的な研究を世界に先駆けて行い、水素結合が接着相互作用の要因になっていることを明らかにした。とくに接着界面に存在する吸着水の影響について理論的な考察を行った。計算モデルには接着剤分子としてビスフェノールA型のエポキシ樹脂を、被着材表面として水酸化されたγ-アルミナ面および同様に水酸化された炭素表面とシリカ表面を用いた。接着界面に働く接着力は接着強度に強く関係すると考えられるが、実験による接着強度の測定では、濡れの不完全さや、被着材や接着剤の内部応力により原子間に働く最大接着力は過小評価されてしまう。そこで、理論計算から独自の手法を提案し、最大接着力を理論的に求めることに成功した。吸着水の層の厚みは接着力に極めて重要な効果を及ぼし、とくに吸着水の層の厚みが増すと界面の接着力が急激に低下することを理論的に明らかにした。さらに、接着相互作用に及ぼす静電相互作用とファンデルワールス相互作用の寄与について議論することができた。この理論結果は接着現象の理解に資するものである。
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すべて 雑誌論文 (43件) (うち国際共著 3件、 査読あり 43件、 謝辞記載あり 43件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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