有機薄膜太陽電池は軽量・フレキシブルという特長を持ち,印刷技術を利用して低コストで製造可能である。光電変換効率を向上させるためには,活性層の構造を制御することが重要である。ドナーとアクセプターがナノレベルで相互に入り組んだ相互貫入構造は励起子や電荷の移動効率が飛躍的に向上するため,光電変換効率の改善が期待できる。ディスコチック液晶分子は分子面を重ねるように積層した一次元のカラム構造を発現し,このカラム構造はπ電子共役系を介しているため,積層方向(カラム軸方向)に高いキャリア輸送能を示す。そこで,本研究では基板から表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)法を用いて,側鎖に有機半導体分子を有するポリマーブラシを合成し,カラム構造の制御をめざした。その後,ポリマーブラシ間にドナーを導入し,相互貫入構造の構築をめざした。 有機半導体モノマーとして,メタクリレート部位を有するペリレンジイミド(PDI),フタロシアニン,オリゴチオフェンをそれぞれ合成した。シランカップリング剤によりガラス基板表面に開始基を導入し,SI-ATRP法によりポリマーブラシを作製した。合成したモノマーのうち,PDIモノマーが良好な重合性を示した。PDIポリマーブラシのAFM測定から,PDIが数十ナノメータースケールのドメインを形成することが分かった。PDIポリマーブラシに電子ドナー材料であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)をスピンコートし吸収スペクトルを測定すると,PDI由来の吸収を保持したままP3HT由来の吸収が現れた。さらに蛍光スペクトル測定を行ったところ,P3HTの蛍光がPDIによりクエンチされることが分かった。以上のことから,PDIポリマーブラシをテンプレートとしてドナーとアクセプターのヘテロ構造を形成できることが明らかになった。
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