研究課題/領域番号 |
15K13713
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西出 宏之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90120930)
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研究分担者 |
小柳津 研一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90277822)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / 機能材料 / 水素貯蔵 / 電解 / 酸化還元 |
研究実績の概要 |
アンモニアや有機ハイドライドに次ぐ、まったく新しい水素キャリアとして芳香族ケトン高分子を提案し、その機能の実証を目的としている。申請者らが有機電池に関する研究で確立してきたレドックス活性高分子による可逆・定量的、高速かつ高密度の電荷貯蔵を、水素付加・発生体(水素キャリア)を与える手法として展開する。これは汎用プラスチックのような安定性、安全性、利便性をエネルギーキャリアに持ち込む新規な着想であり、取り扱いやすさや成型性を持たせた機能材料としてエネルギーキャリアの多様化に資する方法論である。揮発・漏れ、毒性が無く、また貯蔵安定性が極めて高い樹脂ならではの利点を、水素の可逆的貯蔵・脱離を可能とする有機材料の設計手法と組合せることによって、有機高分子での水素吸蔵・発生を初めて可能とする。 平成28年度は以下の成果を得た。 (1)フルオレノンポリマーの合成と樹脂の作製 フルオレノンを密にもつポリマー群をまず合成した。具体的には、フルオレノンのビニル体を合成し、ラジカル重合によりポリマーを得た。またポリアクリル酸誘導体にフルオレノンを導入した高分子およびそのゲルを合成した。電解水素化と水素発生の両プロセスにおいて、ポリマーの電解液または触媒溶液への親和性が高い効率の鍵となり、骨格構造と架橋度により調整できることを明らかにした。 (2)高分子としての電解還元・プロトン付加過程の解明と高効率化 少量のカーボンなどの導電補助剤でフルオレノンポリマーと複合体を作製し、電解水素化の際のバルク抵抗を低減、効率高い電解水素化を試験した。ポリマー繰り返し単位間での電荷輸送・貯蔵を各種電気化学計測より明らかにするとともに、これと対比して、ポリフルオレノンアニオン体でプロトンが交換しながら順次水素付加していく過程を理解する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進捗しており、最終年次での成果とりまとめに継げられると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究実施は次を計画している。 (1)水素発生過程の解明、反応速度とエネルギー収支に関する考察 イリジウム錯体触媒、具体的には2-ヒドロキシ-N-ピリジン(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(Ⅲ)ジクロリドやアクア(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジオナト)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(Ⅲ)のt-ブチルアルコール溶液にフルオレノールポリマーを浸し、加温により水素ガス発生を定量する。加温温度、反応時間、溶媒種の影響を検討する。触媒的な脱水素・水素反応の活性化エネルギー、熱収支を算定し、電解水素化とあわせ水素キャリアとしてのエネルギー収支をダイアグラムとして描き、アンモニア、メチルシクロヘキサンのそれらと比較し、本法の優位性を考察する。 (2)高質量水素密度な高分子水素キャリアの分子設計 フルオレノンに代表される芳香族ケトンが、水素付加・脱離体および還元ジアニオン体が共に化学的な安定度高い理由を電子状態計算より明らかにし、水素キャリアとなる分子構造の要件を抽出する。さらに、質量水素密度をメチルシクロヘキサンなどの有機ハイドライドに近づけるべく、水素付加部位の単位分子量に基づく設計により新しいキャリア分子を提案する。
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