有機ハイドライドに次ぐ、まったく新しい水素キャリアとして芳香族ケトン高分子を提案、その機能の実証を目的とした。レドックス高分子による可逆・定量的で密度高い負の電荷の貯蔵を、水素付加・発生体を与える、すなわち水素キャリアを実現する手法として展開した。これは汎用プラスチックのような安定性、安全性、利便性をエネルギーキャリアに持ち込むものである。揮発・漏れ、毒性が無く、また貯蔵安定性が極めて高い樹脂ならではの利点もつ、有機高分子での水素吸蔵・発生を初めて提示した。 フルオレノンを密にもつポリマーとしてまず、ビニル体を合成し、ラジカル重合によりポリマーを得た。またポリアクリル酸にフルオレノンを導入、そのゲルも合成した。電解水素化と水素発生の両プロセスにおいて、骨格構造が高い効率の一つの鍵となることを明らかにした。少量のカーボンなどの導電補助剤と複合体を作製し、電解水素化のバルク抵抗を低減、効率高い電解水素化を実証した。ポリマー繰り返し単位間での電荷輸送・貯蔵を各種電気化学計測より明らかにするとともに、これと対比して、プロトンが交換しながら順次水素付加していく過程の知見を得た。 イリジウム錯体溶液にフルオレノールポリマーを浸し、加温により定量的な水素ガス発生を実証した。触媒的な脱水素反応の活性化エネルギー、熱収支算定し、室温での-1 V印加による電解水素化とあわせ水素キャリアとしてのエネルギー収支を描き、有機ハイドライドのそれらと比較し、本法の優位性を考察した。 フルオレノンに代表される芳香族ケトンが、水素付加・脱離体およびジアニオン体が共に化学的な安定度高い理由を明らかにし、水素キャリアとなる分子構造の要件を抽出した。キナルジンなどN複素環化合物のポリマーで、効率高い電解水素化と水素発生も明らかにした。以上より、水素付加部位の設計により質量水素密度のより高いキャリア有機高分子を提案した。
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