研究課題/領域番号 |
15K13714
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田實 佳郎 関西大学, システム理工学部, 教授 (00282236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 圧電性 / 繊維 / 生地 |
研究実績の概要 |
圧電性は水晶のような結晶(並進対称性を持つ)固有の性質として理解され,そのため複雑な高次構造を持つ高分子固体の場合圧電性の起源を分子論的に理解することは困難とされていた.しかしながら,我々はキラル分子を持つ主鎖がらせん構造を描く高分子(所謂キラル高分子)の圧電性は,そのらせん構造から理解できる物性であることを示し,センサやアクチュエータへの適用を可能にする機能設計方法を追求し,衣服自体をsmartセンサとすることを目指してきた.ここでは,身体の動きを圧電性によりセンシングできる洋服を実現の可能性を示し,その成果により,操作を意識しない装着に抵抗感のない画期的な洋服型ヒューマンマシンインターフェース(HMI)の可能性を見出した.具体的には,キラル高分子であるポリL型乳酸(PLLA)繊維を生地に織り込み,その生地に曲げ変形以外を加えた時でも圧電信号が発生する機構を探索した.生地に曲げ変形以外を加えた時でも,織り込まれたPLLAに結果的に疑似的な曲げ変形が生起する織物構造を,有限要素法を用い,追求した.その結果,例えば,織物の基本である三元織である平織,綾織,サテン織について,平織は曲げ変形を検出し,捩じり・伸び変形を検出できない,綾織は捩じり変形を検出し,サテン織は伸び変形を検出することができることを,見出した.更に多くの計算・試行錯誤の結果,単純な捩じり変形・伸び変形のみの検出ではあるが,それが可能な織物(圧電ファビリック)を具現化した.そして,試作した圧電ファブリックを実際に洋服の腕部分に織り込み,着用者の腕の動き(単純な曲げ,捩じり)をセンシングし,無線で遠隔ロボットにシンクロさせるシステムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
wearable deviceを考えると装着時の違和感や破損の問題がある.そこで,我々は,導電性炭素繊維を特殊な方法でファブリックに縫込み,これを電極とし静電誘導を利用し信号検出を計ることで,電極レス(繊維に蒸着などで電極を付与しない)を実現することを試みてきた.しかし,この手法で,圧電信号の検出が何とかできることは示せたが,S/N比,外部擾乱,人が持つ浮遊静電容量の影響が顕著に現れ,実用的な使用は困難であることも分かった.
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今後の研究の推進方策 |
単純変形に対する圧電性を発現する織物構造を設計することはできたが,変形の大きさに対応した電気信号が得られておらず,圧電ファブリックは定量性のあるセンサとは言い難い.変形の大きさと圧電出力信号を線形化するためには,圧電ファブリックの様々な動きを,織り込まれた圧電性PLLA繊維の曲げ変形に変換する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
繊維からの信号に対する外部電磁気ノイズに対する遮断に必要な解析が当初予定より大幅に時間がかかった.更にその対策についての準備に時間を要した.
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように解析,対策を立てるのに大変時間がかかったが,現在,すべての準備が整っている.当初の予定通り,デモンストレーションシステムを構築し,原理の検証,実証を進めることが可能であり,遂行する.
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