界面レーザー捕捉結晶化法では、レーザー照射により集光点近傍の広域に局所的な濃度上昇が誘起される高過飽和領域が形成されるが、レーザー集光点からの結晶化は見られていない。そこで本年度は、集光点近傍に形成される局所濃度上昇領域中でのタンパク質分子の配向を明らかにするため、捕捉レーザー照射下における顕微偏光ラマン測定を行った。捕捉レーザー照射下の偏光ラマン測定結果より、高濃度領域中のリゾチーム分子が捕捉レーザーの偏光方向に依存しある一定の方向を向きながら異方的に配向していること、観測されたリゾチーム分子の配向が結晶中の分子配向と異なっていることが示された。結晶化のためには“結晶形成可能な過飽和度”と“結晶中と同様の分子配向・配置”が必要であるが、本手法ではレーザー照射により高濃度・高過飽和度の領域の形成とタンパク質分子の異方的配向を成し遂げることが可能であることが示された。これらの結果をもとに、形成された高濃度かつ異方的な分子配向場中へ新たな外場を加えることで結晶と同様の分子配向を誘起し、レーザー集光点での結晶核形成を促進するための検討を進めている。上記に加えて、超分子タンパク質フェリチンを用いて界面レーザー捕捉による結晶化挙動の検討もあわせて行い、対称性の高い分子構造と結晶中で等方的分子配向・配置を示すフェリチン分子では捕捉レーザー照射下において集光点からリアルタイムな結晶化を誘起可能である事も見いだした。本研究結果はレーザー照射により誘起されるタンパク結晶形成率向上は局所濃度変化によるものであり、また、分子構造の対称性と結晶中での分子配向・配置を考慮することでリアルタイムなタンパク分子のレーザー捕捉結晶化が可能であることを明らかにし、当初の目的を達成した。
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