研究実績の概要 |
Piwi-interacting RNA (piRNA)は、生殖細胞に特異的に発現しているユニークな小分子RNAで、その構造や機能が特に注目されている小分子RNAの一つである。piRNAの定量分析法として、これまでに質量分析法や2D-TLC法等が提案されているが、標的RNAの精製を必要とするため操作が煩雑であること、あるいは酵素を利用するため時間がかかること、さらには検出条件の最適化が難しいことが改善課題となっている。本研究では、piRNAに特徴的な3’末端塩基の2′-O-メチル化構造に着目し、ポリアクリルアミドゲル担持ボロン酸に基づくアフィニティー電気泳動によるpiRNAの簡便な分離・検出法の開発を試みた。 ボロン酸誘導体を担持したポリアクリルアミドゲルを作製し、その分離機能を評価した。その結果、非修飾RNAと比べて2’-O-メチルRNAの泳動速度が大きくなり、メチル化の有無に基づくRNA分離が可能であることが分かった。これは、ゲルに担持したボロン酸が非修飾RNAの1,2-ジオール部位とエステル形成をするためで、また、ボロン酸を担持しても、その感度や塩基長の識別能など、ポリアクリルアミドゲル本来の機能を維持できることが分かった。 以上の結果を踏まえて、実サンプル中のpiRNA分析に本手法を適用した。その結果、マウス精巣由来のtotal RNAからpiRNA(29-31nt)を選択的に分離・検出できることが分かった。本手法は、total RNAの精製を全く必要とせず、1ステップでの解析が可能であることから、極めて有用なpiRNA定量分析法になりうると期待できる。
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